大阪・関西万博会場内に「オールジェンダートイレ」が登場した。同様のトイレは東京の複合施設に設置された際、「女性や子供が安心して使えない」などの批判を受けて廃止された。子供用トイレの一部では、男女別も仕切りもない大小便器が並んでおり、改善を求める声が上がっている。
6NV2QGPNKBHUDAT2TOAQICQFFU

オールジェンダートイレの内部。個室トイレも洗面台と鏡も共用となっている

This post is also available in: English

大阪・関西万博会場内のトイレに利用者の性別を問わない「オールジェンダートイレ」が登場した。同様のトイレは2年前にも東京・歌舞伎町の複合施設で設置され、「女性や子供が安心して使えない」などの批判を受けて廃止された経緯がある。

万博協会の公式サイトによると、万博会場にあるトイレ計46カ所のうち18カ所にオールジェンダートイレを計112台設置。4月9日の報道公開時に確認したところ、このうち会場中心部の「静けさの森」近くのトイレは33台が設置された大型トイレとなっていた。

万博会場の「オールジェンダートイレ」の案内板

入り口を入ると、両側に男女共用の個室トイレが並び、中央に共用の洗面台と鏡が設置されていた。男性の小便器はさらに奥にあり、共用スペースを通りすぎて利用する形になっていた。

会場関係者によると、女性用トイレの混雑緩和策の意味があるといい、「男性との共用を望まない女性には、女性用も用意している」。女性用の個室は3室あり、内部に洗面台も備わっていた。

一方、男性専用の個室はなかった。案内板では最寄りの「男女別トイレ」の方角が案内されていた。

歌舞伎町に令和5年4月開業した高層複合施設「東急歌舞伎町タワー」に「ジェンダーレストイレ」が設置された際は、共用個室8室、女性用2室、男性用2室などが並び、洗面台は共用だったが、批判を受けて約4カ月後に男女別トイレに改修された。

「こども用トイレ」一部に仕切りなし異例の「中国式」

万博会場の子供用トイレの一部で、男女別も仕切りもない大小便器が並んでいることがわかり、「災害の避難所より劣悪」「保育園などではよくある」などとSNS上で賛否を呼んでいる。9日に報道公開された会場で確認すると、仕切りのほか男女の別もなく利用するようになっていた。

万博協会の公式サイトによると、万博会場には計46カ所のトイレがあり、このうち12カ所は成人用のほかに子供用の小型便器が設置されている。

ところが、実際に会場で確認したところ、このほか東西ゲートにある「迷子/ベビーセンター」に隣接した2カ所には「こども用」として子供専用のトイレが設置されていた。

男女の別はなく、室内に大小便器3つ、男児用小便器2つが並んでいる。大便器同士の間はプラスチック製の仕切りが設けられているだけだった。

こうした仕切りのない便器は中国では一般的とされるが、日本では極めて異例。

大阪・関西万博会場の一部の子供用トイレ

SNS上では「建築設計に携わる者ですが1~3歳児用のトイレはこれが標準です」といった説明の一方、「いまどきの子供たちの心理をまったく無視した設計」「保育園や幼稚園の場合は、使う子供たちも見守る大人も知っている人だけど、公共の場は知らない人ばかり。やっぱりこれは違う」といった意見が交わされている。

子供トイレ便器5つは「基本一組使用想定」の説明 石垣氏「無理ある」

立憲民主党の石垣のり子参院議員は4月15日の参院内閣委員会で、万博会場の一部の子供用トイレが男女の別も仕切りもなく大小便器が並んでいることについて「子供のプライバシーの配慮に欠けているのではないか。親子で利用するにしても、見ず知らずの大人に丸見えになってしまう」と指摘し、改善を訴えた。

Constitutional Democratic Party's Noriko Ishigaki speaks at the National Diet on April 15.

経済産業省の担当者の説明によれば、このトイレは0歳~2歳の乳幼児の利用を前提とし、保護者や見知った大人のみが乳幼児を連れて入れるという。会場スタッフが入口に控えているため、無断で入ることはできず、担当者は「基本的には一組、了解が取れた場合は他の組み合わせがある」と述べ、「利用者のプライバシーは担保されて運用されている」と強調した。

石垣氏は5つの便器が並んでいる設計について「三つ子と双子で年子ということもあり得るが…」と述べた上で、「基本一組での利用を想定し、了解があれば別の人も使ってもらうというのは説明に無理があるのでは。設計のミスがあれば仕切りを作るなど改善すればいいだけの話だ」と改めて疑問視した。

筆者:奥原慎平(産経新聞)

This post is also available in: English

コメントを残す