
拉致被害者の早期救出を求める署名を呼び掛ける家族会の横田拓也さん(右から3人目)ら=4月26日午前、東京都中央区(関勝行撮影)
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北朝鮮による拉致被害者の家族会が4月26日、東京・銀座で早期の被害者救出を政府に求める署名への協力を呼び掛けた。横田めぐみさん(60)=拉致当時(13)=の弟で家族会代表の拓也さん(56)や、田口八重子さん(69)=同(22)=の長男、飯塚耕一郎さん(48)ら家族5人が参加。支援組織「救う会」によると、家族会が主催し複数のメンバーが街頭に立つ署名活動は、約12年ぶりとなる。

今年中の全被害者救出、訴え
親世代の家族らの死去が続く中、家族会は今年2月、一刻も早い局面打開に向けて世論への訴えかけを強めるという運動方針を策定。会が結成された平成9年3月以降、集めた署名は1920万筆を超えており、年内の2千万筆突破を目指す。
銀座の数寄屋橋交差点周辺で行われた活動では、「政府は全力で今年中にすべての拉致被害者を救出せよ!」などと書かれたのぼり旗を掲示。家族や支援者らが分散して並び、「皆さんの一筆一筆が力になる。ご協力をお願いします」などと声を張り上げた。
大型連休期間に入り、銀座は買い物客や観光客らでにぎわっていた。呼びかけに足を止める人はやや少なかったが、時折、家族の訴えに耳を傾けたり、署名用紙に手を伸ばす人の姿も見られた。
都内の会社員、新沼孝さん(72)は、「(めぐみさんの母の)早紀江さんとそう離れていない世代であり、子供を奪われた親としての気持ちを思うと、本当に胸が痛む。少しでも後押しになればと考え、署名した」。神奈川県秦野市の女性(77)は、「テレビでもよく見ていたご家族の方々がいたので、署名した。頑張ってほしいが、最終的には、政治が解決するべき問題だ」と話した。

「諦めたら終わってしまう」
12年前の平成25年4月に行われた署名活動は、当時に目標としていた署名1千万筆を目前に、JR御茶ノ水駅近くで実施。めぐみさんの父、滋さん=令和2年に87歳で死去=や母の早紀江さん(89)らが参加した。
早紀江さんは今回、参加を見送った。本人は意欲を示していたものの、息子の拓也さんが「めぐみが帰ってきたときに、あなたがいなくては意味がないんだ」と体調を優先するよう説得したという。
拓也さんは、家族会としてまとまって街頭署名に立った経緯について、「家族会は被害者の奪還に対し、『親世代が存命中の実現』というタイムリミットを設けている。その親世代は、母の早紀江を残すのみとなり、早急な事態進展に向けて改めて世論に訴える必要があると考えた」と説明。

耕一郎さんは、「今回の署名で、記憶の喚起だったり、新たに問題の存在を伝えたりすることはできたと思う。諦めたらそこで終わってしまうので、これからも声を上げ続けていきたい」と述べた。
筆者:中村翔樹(産経新聞)
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