トランプ氏の独善的な「相互関税」は同盟国に対する扱いではない
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Trump's Arbitrary 'Reciprocal' Tariffs are No Way to Treat an Ally

トランプ氏の独善的な「相互関税」は同盟国に対する扱いではない

2025年大阪・関西万博が4月13日、開幕した。それを前に、「トランプ劇場」が再び世界を揺さぶっている。米国のトランプ大統領が2日、全輸入品に対する国別の追加関税の大幅引き上げを発表すると、政治的自由がない、あの中国までが「自由貿易の重要性」を振りかざしたのは何と皮肉なことか。世界中でトランプ批判が噴出し、てんやわんやの大騒ぎとなっている。

日本の多様な最新技術を世界に発信する万博は、日本、そして世界の「近未来社会」を垣間見る機会である。本欄でもぜひ取り上げたいが、秋まで開かれているので、いったんはお預けにして前回に続き、「トランプ劇場」第2幕、「世界貿易戦争」の勝者は誰なのか、いま私たちは何をしなければならないのか、考えてみたい。

中国は10日、トランプ政権が合計104%の追加関税を課したことへの報復措置として米国産のすべての輸入品に84%の追加関税を発動した。これにトランプ氏はすぐ反応し、追加関税の125%への即時引き上げを発表した。

ただ、欧州連合(EU)加盟国も15日から、米政権が計20%に関税率を増やしたことへの報復措置として農産物や鉄鋼、家電などの米国製品に最大25%の追加関税を課すという。

トランプ氏は日本に対しても24%の追加関税を導入すると発表。それによって日本企業の負担が年間約5.2兆円増えるとの試算もあり、日本の輸出企業に大きなダメージが出ることが予想されている。

米ホワイトハウスで大統領令を掲げるトランプ大統領=4月2日、ワシントン(ゲッティ=共同)

産経新聞本紙でも、主張やコラム記事などを通じてトランプ氏の一方的な関税導入を批判したり、政府に対応策を急ぐよう求めたりする意見が連日紹介されている。英語ニュース・オピニオンサイト、JAPAN Forward(JF)も、そうした声を英語で届ける努力をしている。上の英文(日本語訳)は、4日付本紙主張記事の見出しである。

ただ、日本も、コメが204.3%、こんにゃく芋に40%など、高い関税をかけているものもある。こんにゃく芋に至っては1700%という超高関税をかけていた時期もあったという。こんにゃく芋の国内生産の9割以上を占める群馬県出身の有力政治家が農家保護のために導入したとみられている。

EUでも、域内での輸出入は無税だが、域外からの輸入品については細かく、関税ルールが定められて域内の生産者を守る仕組みがつくられている。

トランプ氏は9日、交渉を求めてきている国については追加関税について90日間の交渉期間を設け、その間は税率を10%にすると発表した。中国やEU、カナダなど反トランプ色を色濃くする国・地域は、〝報復関税〟を声高に語るが、日本の石破茂首相に求められているのは、国益を中心に据えた米国との交渉を早急に始めることである。

日本の国益とは、日本の領土である尖閣諸島の奪取をもくろみ、台湾の武力統一すらも辞さない姿勢を示す中国から日本の国土を守り、日本を経済的に繁栄し防衛面でも強い国へと復活させる道筋をつくることにほかならない。それがアジア、そして世界の平和と安定に寄与することになるからだ。

日本の柔道は、いまや世界の柔道となった。礼節を重んじ、対戦相手への敬意を尊ぶその道は不変だが、形は変化した。日本は、米国に交渉を求めている75カ国以上の中でも早い段階で交渉に入るとみられる。石破首相には、決して弱腰にならず、柔道の教えにある「柔よく剛を制す」の精神で、剛の相手に対してはしなやかに、自由な発想で国益を追求してほしい。

JFは、この大転換期に日本の進む道を世界に発信していきたい。

筆者:内藤泰朗(JAPAN Forward編集長)

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2025年4月14日付産経新聞【JAPAN Forward 日本を発信】を転載しています

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