
ラオス中部の森で不発弾を調べる国際NGO「マインズ・アドバイザリー・グループ」(MAG)のメンバー。トランプ米政権による対外援助縮小で活動が停滞した=7月(桑村朋撮影)
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7月初旬、ラオス中部シェンクワン県中心部の森で、英国の国際NGO「マインズ・アドバイザリー・グループ」(MAG)のメンバーが、ベトナム戦争中から残る不発弾の除去活動を行っていた。ラオス人スタッフ数人が探知機を使い、うっそうと茂った草木の中を慎重に捜索していた。
「広い国土をくまなく調べる必要があり、気の遠くなる作業だ」。MAG統括責任者のロン・ハーはこう述べ、「地道な作業だが国民の平和のためには欠かせない」と力を込めた。
不発弾の多くは米国の投下によるものとされる。米国はベトナム戦争最中の1964年~73年、200万トン以上の爆弾をラオスに落とした。ラオスとベトナム間の共産主義勢力の補給線を断つ狙いがあった。米CNNによると、ベトナム戦争期のラオスへの爆弾量は、第二次世界大戦中にドイツと日本に落とされた量を上回る。
こうした歴史的経緯から米国は不発弾除去を担うMAGに資金援助を継続してきた。ところが、今年1月に発足したトランプ米政権は対外援助機関、米国際開発局(USAID)の解体を決定。MAGへの援助が停止した。
「援助停止は大打撃だった。MAGのスタッフの多くが帰国を余儀なくされた」。シェンクワン県外務局長のシウォン・オンラボンは明かす。別の援助で活動を再開したが、人員が減って作業が停滞。7月時点で10月以降の活動資金が「白紙の状態」だと語った。
除去作業が本格化してから約30年間で除去された不発弾は全体の数%にとどまる。今の速度では完全除去に1千年以上かかる計算だ。オンラボンは「米国は自らが落とした爆弾の処理に責任を負うべきだ」と憤った。
筆者:桑村朋(産経新聞)
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2025年9月10日付産経新聞【吞まれるアジア 中国「支援」の実像②】より
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