
アフリカ諸国との「ホームタウン」に認定された国内4市の市長ら=8月21日、横浜市西区
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国際協力機構(JICA)が国内4市をアフリカ4カ国の「ホームタウン」に認定したことを巡り、「移民の受け入れではないか」などの批判や不安が広がり、市側に苦情が殺到している。
ホームタウン認定は横浜市で開かれたアフリカ開発会議(TICAD)に合わせて発表された。アフリカ各国と日本の地方自治体の交流を強化するもので、取り組み自体は悪くない。
だが、アフリカ側では自国民を日本に移住させるかのような政府の表明や報道があった。
千葉県木更津市はナイジェリアのホームタウンに認定された。ナイジェリア政府は「日本政府が高い技能を持つ若者に特別なビザ制度を創設する」との声明を出した。山形県長井市はタンザニアのホームタウンに認定され、タンザニアの地元メディアが「日本は長井市をタンザニアにささげた」と報じた。
日本への自国民の移住を歓迎するものだが、日本は移民国家ではないため、このようなことはあり得ない。不安が広がったのは当然だ。
誤解に至らせた外務省やJICAの責任は極めて重い。猛省すべきであり、なぜこのような失態につながったのか、経緯を検証すべきだ。ふるさとを意味するホームタウンという言葉を使ったことも、誤解につながった要因の一つといえよう。
アフリカ4カ国に過度な期待を抱かせ、せっかくの交流に水を差したことは残念である。

先の参院選では外国人問題が争点になった。外国人の犯罪や迷惑行為が目立つようになり、治安の悪化を懸念する声は多い。日本人が不安を抱いていることを、政府はもっと重く受け止め、交流といえども安易に考えず丁寧に進めたい。
日本からの連絡を受け、アフリカ側の政府や報道機関は内容を是正した。
ただその後も、JICA前ではホームタウン事業撤回を求めるデモが行われた。自治体には今もアフリカからの移民・移住反対などの苦情や抗議の電話が相次ぎ、SNS上でも批判は続いている。
これらは日本と4カ国との関係を阻害し、アフリカへの影響力強化を図る中国やロシアを利することになりかねない。その点は十分に留意しなければならない。
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2025年9月2日付産経新聞【主張】を転載しています
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