北海道電力泊原子力発電所3号機が原子力規制委員会の安全審査に合格した。再稼働に向けた大きな一歩として歓迎したい。
Tomari Nuclear Power Station Hokkaido

北海道泊村の北海道電力泊原発。右が3号機

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北海道電力泊原子力発電所3号機(北海道泊村)が原子力規制委員会の安全審査に合格した。再稼働に向けた大きな一歩として歓迎したい。

道内では、次世代半導体工場や人工知能(AI)を支えるデータセンターなど多電力需要施設の急増が見込まれているだけに心強い展開である。

北海道電は令和9年春頃までに防潮堤などを完成させ、再稼働を目指す方針だが、実現には地元同意が必要だ。鈴木直道知事には早期に理性ある賛意の発言を期待したい。

現在の北海道では原発が稼働していないことに起因する各種のリスクが、稼働によるリスクを圧倒的な差で上回る状況だ。そのことを、道民の暮らしに責任を持つ知事が理解できないようでは資質を問われよう。

会見に出席した(左から)ラピダスの東哲郎会長、小池淳義社長兼CEO、鈴木直道北海道知事、横田隆一千歳市長=7月18日、北海道千歳市(坂本隆浩撮影)

平成30年9月の北海道胆振東部地震では火力発電所が被災し、道内のほぼ全域が停電に陥るブラックアウトが起きている。冬であったら、どれだけの道民が命を落としていたことか。泊原発が稼働していれば全域停電は避けられた。

泊原発は強固な岩盤に建っていて地震に強い。大津波を伴った平成5年の北海道南西沖地震(マグニチュード7・8)の震源に近かったが、運転中の1、2号機に影響はなく発電を続けている。鈴木知事には、この事実を再認識してもらいたい。

看過してはならないのは、原子力規制委員会の安全審査に12年を要した点だ。泊3号機の審査期間は、全合格原発中で最も長い。敷地内の活断層の有無などをめぐって審査が長期化したが、結局は北海道電の見解が正しかったわけである。

行政手続法で定める安全審査の期間は2年であることに照らすと著しい逸脱だ。

規制委の泊原発への対応には首をかしげざるを得ないものもある。北海道電が自主的に建造した防潮堤の件だ。平成26年の完成後、工法などに難があると指摘された北海道電は全てを取り壊して現在、再構築中だ。規制委は最初の防潮堤の工事中に指摘できなかったのか。

日本の原子力規制行政は米国に比して効率性で劣後する。その一因は電力会社との対等性を尊重する組織文化が未成熟である点に求められよう。エネルギー安全保障上からも規制委の自己改革が強く待たれる。

2025年8月14日付産経新聞【主張】を転載しています

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