
自警団が目を光らせていた「バベットビジネスセンター」の入場ゲート周辺=6月下旬、カンボジア東部バベット(桑村朋撮影)
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「ここで何を撮っている」。カンボジアの首都プノンペンから車で約3時間の東部バベット。6月末、中心部にある「バベットビジネスセンター」と呼ばれる一帯を撮影していると、中国語を話す警備の男に制止された。
呼称はビジネスセンターだが、面積約10万平方メートルはある。新国立競技場の敷地とほぼ同じ広さだ。区域内には十数棟の居住施設や料理店が立ち並び、中国語の看板などがそこかしこに見え、小さな中国人街の様相を呈している。カンボジアのNGO関係者によると、その実態は世界中から金をだまし取る中国系犯罪組織の「詐欺センター」だという。
「ボスに説明しろ」とセンター内部に案内された。「写真を消せ。目的は何だ」。龍や虎の絵が飾られた事務所で10人超に囲まれた。
約30分後に解放されたが、撮影データの入ったSDカードを奪われた。これ以上の深入りは危険だと判断して、取材継続を断念して立ち去った。
地元の男性によると、センターでは数千人が生活しているという。センター内にはパソコンに向かって作業をする南アジア系とおぼしき人物の姿が見えた。このセンターが詐欺拠点だとすれば、南アジア系の男性は詐欺に加担させられている可能性もある。
筆者:桑村朋(産経新聞)
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2025年9月9日付産経新聞【吞まれるアジア 中国「支援」の実像①】より」
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