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クマによる被害が各地で続発し、政府の対応が問われている。ハンターが加入する「大日本猟友会」は、クマ駆除のため自衛隊が派遣されることに反対した。捕獲のため警察官が市街地でも自治体判断で発砲できる「緊急銃猟」を行うことにも疑問を投げかけた。
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クマが侵入した倉庫兼社屋に入り、「緊急銃猟」を行う猟友会のメンバーら=10月31日、新潟県阿賀野市

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クマによる被害が各地で続発し、政府の対応が問われている。こうしたなか、全国のハンターが加入する一般社団法人「大日本猟友会」(佐々木洋平会長)が11月5日、自民党のクマ被害緊急対策プロジェクトチームの会合で、クマ駆除のため自衛隊が派遣されることには「反対」だと表明した。国防がおろそかになるといった理由からだ。また、捕獲しようと市街地でも自治体判断で発砲できる「緊急銃猟」を警察官が行うことにも疑問を投げかけた。

複数の関係者によると、同会には狩猟免許を持つ人が加入でき、全国で約10万人の会員がいる。同会の下に都道府県の猟友会や、市町村を単位とした支部猟友会がある。同会は昨年1年間にクマを計約9100頭、今年に入り5000頭を捕獲した。シカやイノシシも年間に100万頭以上を仕留めている。ハンターは、銃を使うたびに2回以上の射撃練習を実施し、身の安全を確保したうえで狩猟に臨んでいるという。

目撃情報が相次いでいるツキノワグマ(奈良県提供)

「警察官はクマの知識も経験も少ない」

佐々木会長はこの日の会合で自民側のヒアリングに応じた。「クマは人を見ると向かってきて、非常に危険。知識も経験も少ない警察官が、一定の研修や訓練を受けただけで緊迫した現場で『緊急銃猟』ができるとは非常に疑問だ」と指摘した。また、自衛隊の現場派遣についても「緊迫した国際情勢のなか、国防を担う自衛隊がクマ対策で箱わなの設置といった後方支援に出動することにも反対」だとする考えを示した。

メガソーラー開発での里山崩壊もクマ出没の一因

同会は、クマが各地で出没している原因に①ナラなど実のなる木の不作②イノシシの増加で、クマが好物の栗やドングリをイノシシが食べ尽くしている③クマの楽園であるはずの国有林で、スギやヒノキの造林のため、ブナやミズナラといった実のなる樹木が伐採されてしまった④これまでは生肉を食べていなかったツキノワグマの食性が変わり、わなにかかったシカを食べるようになった⑤人の生活圏と、クマの生息域があいまいになった⑥中山間地域で空き家が増え、クマはそこを冬眠場所に利用している⑦メガソーラー(大規模太陽光発電施設)の開発が広範囲で進み、里山が崩壊したことーを順に挙げた。

「いまだに現場は混乱している」

そのうえで、同会は政府への要望を出した。9月1日の改正鳥獣保護管理法の施行で「緊急銃猟」は可能にはなったが、多くの市町村で対応マニュアルの整備が進んでいないことなどから、「いまだに現場は混乱している」「緊急猟銃で生じた損害は市町村が賠償責任を負うが、猟銃を撃った捕獲者の銃刀法上の責任は明確ではない」と前置きしたうえで、4項目の対応を求めた。各項目は以下の通り。

1、クマ対策に関わる緊急銃猟の意義や実態、現場に即した組織のあり方、担い手(狩猟者)の育成や確保について早急に検証、検討し、対策に万全を期す。

2、緊急銃猟をした狩猟者が、跳弾などで事故を起こした場合に責任が及ばないよう、法改正や補償制度を確立する

3、捕獲者は非常に危険な作業に携わっている。捕獲者との調整や、後方支援の従事者に支払われる報酬などは「専門職待遇」として統一してほしい

4、緊急銃猟はあくまで緊急時の対処療法に過ぎない。適正な個体数の管理や、総合的な野生鳥獣の管理施策、狩猟者の育成のための制度と十分な予算確保が必要

筆者:村上智博(産経新聞)

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