日本の若者の声を世界に発信する「Ignite」。第9回は2024年の「北朝鮮人権侵害問題啓発週間作文コンクール」英語エッセイ高校生部門で優秀賞を受賞した渕脇詩さんの「Silent Victims」を紹介します。
Ignite Uta Fuchiwaki

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日本の若者たちの「声」を世界に届けるJAPAN Forwardの企画「Ignite」の第9回。今回は2024年に開催された北朝鮮人権侵害問題啓発週間作文コンクールで英語エッセイ高校生部門の優秀賞を受賞した、鹿児島情報高等学校2年(受賞当時)、渕脇詩さんの「Silent Victims」を掲載します。

[受賞作品は上の (This post is available in English) のリンクをクリックしてください。]

拉致問題に関するシンポジウムで優秀賞を授与される渕脇詩さん=2024年12月14日(Screenshot)

[和訳]

沈黙する被害者

家族の誰かが夕陽を見に浜辺に行ってくると言ったきり、戻ってこないことを想像してみてください。

私の故郷である鹿児島で1978年に起きた事件です。この時、市川修一さんと増元るみ子さんは北朝鮮の工作員に拉致されたのです。人生が変わったのは彼ら二人だけではありません。二人の家族、友だちや親せきの人生も変わってしまったのです。それ以来、彼らの家族は、二人を取り戻すべく署名を集め、政府に訴えるなどして活動してきました。しかしながら悲しいことに、2002年に北朝鮮政府は日本人を拉致したことを認め、謝罪しました。北朝鮮は修一さん、るみ子さんを含む8人が亡くなったことを確認しました。この衝撃的なニュースや北朝鮮の透明性の欠如を耳にしてもなお、被害者家族は、愛する人たちが生きていることを信じて、真実を求めて、つまり彼らを取り戻そうと戦い続けています。

実は私は、市川修一さんのお兄さんとお話しする機会を持てました。市川さんは数知れぬつらい時を過ごしましたが、状況は大して変わっていません。クラスメートに拉致問題のことを話しましたが、その多くはこの問題を知ってさえいませんでした。その時になって初めて、これは若い世代のせいであり、私たちの理解と協力、そして助けが不足しているせいだと気づきました。私自身が若い世代だからこそ、この問題についてより強い思いを持ちました。この問題に立ち向かうために立ち上がり、市川さんがこれ以上苦しむことのないように行動を起こさなければという思いに駆られました。

解決策を提示したいと思います。第一に私の世代は、拉致のことをよく知らないようです。市川さんは拉致問題が風化するのがこわいと言いました。今の若者は署名運動に関心がなく、ビラも無視されてしまうとも言いました。知らないということは大きな不安材料であり、それが一番大きな問題だと認識しなくてはなりません。だから、私たち若い世代で意見を戦わせ、話し合うことを続け、理解を深めなければなりません。私たちがもっと意欲的にこの問題に働きかければ、市川さんもきっと喜んでくれると思います。

第二に市川さんは、状況を変えて真相に行き着くために、北朝鮮との首脳会談を開いて直接話し合い、交渉することを心の底から願っていると言いました。しかし、これを実現させるには、すべての世代が署名活動に協力しなければなりません。国民が強固な意志を持てば、外交が広まります、と市川さんは言いました。

市川さんのお母様は息子に会うことなく亡くなりました。修一さんが贈った着物に袖を通すこともできませんでした。市川さんによると、修一さんの誕生日には、家族は修一さんのことを語ることができず、沈黙を守ったままだといいます。家族が沈黙を守る一方で、家は全国の支援者から送られてきたカエルの置物で一杯です。カエルは「帰る」につながるので、修一さんはいつでも彼らの心の中にいます。

私たちにせめてできることは、嘆願書に署名し、交渉を続け、最終的には若者たちに働きかけて、沈黙する被害者に「声」を与えることです。どうかお願いです。市川さんの意思を実現させるのに力を貸してください。

渕脇詩さんのコメント

英語エッセイだからこそ、世界中の人に届ける力があります。市川さんご夫婦が、修一さんと再会できることを心から願っています。

北朝鮮人権侵害問題啓発週間作文コンクール
政府拉致問題対策本部では全国の中高生を対象に、拉致問題関連の映像作品、舞台劇の視聴や拉致問題関連書籍の読書等を通じて拉致問題を知ってもらい、拉致被害者や拉致被害者御家族の心情を理解するとともに、拉致問題解決のために自分に何が出来るのか、何をすべきかについて深く考える機会とすることを目的として、北朝鮮人権侵害問題啓発週間作文コンクールを実施しております。詳しくはhttps://www.rachi.go.jp/jp/shisei/sakubun.htmlをご覧ください。

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