日本の若者の声を世界に発信する「Ignite」。7月に大阪・関西万博会場で行われた「私が実現したい2045年の社会」をテーマにした高校生による英語プレゼンコンテストを紹介します。
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ファイナリストの10人(杉浦美香撮影)

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大阪関西・万博で7月20日、次世代のリーダーを育成するための英語プレゼンテーションコンテスト『GEM Talks 2025』の最終審査が開かれた。予選を勝ち抜いたファイナリスト10人が英語で「私が実現したい2045年の社会」についてプレゼンを行い、自分たちの想いと夢を披露した。

同コンテストは、日本の若者が自分を肯定し、国際人材としての発信力を養ってもらうために、2022年から毎年催されている。名前の「GEM」は「Girls’Energy Manifest」の略と本来の意味である「宝石」をかけているという。

テーマに沿った英語によるプレゼン・ビデオで応募してもらい、予選審査を経てファイナリストに選ばれた10人は、オンラインによるワークショップやコンテスト前日に泊まり込みによるブートキャンプを経て、プレゼン技術のブラッシュアップを行い、最終審査に臨んだ。

最終審査会場は関西万博の「ウーマンズ・パビリオン」だった。パビリオンのコンセプトは「When women thrive, humanity thrives ~ともに生き、ともに輝く未来へ~」。すべての人々が真に平等に生き尊敬し合い共に歩みながら、能力を発揮できる世界をつくるきっかけを生み出すことを目指し、女性たちの体験や視点を通じ、公平で持続可能な未来を志す。コンテストの視点とも重なっていた。

最優秀賞・文部科学大臣賞には、三田国際科学学園高校1年の藤岡莉子さん(横浜市)が選ばれた。

藤岡さんは「英語のプレゼンで、全国から集まった高校生とワークショップを通じて絆を深め、互いに刺激しあえる環境に魅力を感じて応募しました」と話す。

プレゼンする藤岡さん(杉浦美香撮影)

藤岡さんがとりあげたのは「教育」だ。義務教育をあたり前と思っていたが、「世界には今日、1億2200万人が女子ということで、教育を受けることができていない」という現実を、ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんの本をきっかけに気付かされたという。

「受賞できるとは思っていなかった」としながらも「幼いころから女性の教育について関心を持っていた。まだ具体的ではないが、将来は国連など国際機関で働きたい」と夢を語った。

優秀賞には桐蔭学園中等教育学校3年、多田愛梨さん(東京・町田市)が選ばれた。

多田さんは若者の自己肯定感が低いことについて取り上げ、自らの米国の留学体験をもとに、学校に失敗を恐れずに自分の考えを表現できる「The What If Zone」の場を作ることを提案した。

審査員長の藤崎氏(左)と多田さん(杉浦美香撮影)

多田さんは「このコンテストに参加して、キャンプを通じ、みんなで一緒に一つのものを作り上げていくことが刺激になりました」と参加の意義を語った。

審査員特別賞には2人が選ばれた。

受賞者の一人、早稲田実業学校高等部2年、林瑠花さん(埼玉県狭山市)は建築家になり、障害を持つ人が社会とつながることができる場所を作りたいと発表した。障害を持つ人を「ユニーカーズ」と呼び、自分がかつて持っていた偏見をなくすことができたのは、直接的な交流があったからだとしたうえで、心のつながりをデザインをする建築家になりたいと語りかけた。

審査員特別賞を受賞した林瑠花さん(杉浦美香撮影)

林さんは「合宿で、討論を経験して、ものすごい集中できたのは初めての経験で得難い体験になった」としてコンテスト参加の意義を語った。

もう一人の受賞者、広尾学園高校3年、小澤美咲さん(東京都稲城市)は、神経科学に携わる機会が少ないことから、高校生の神経科学のコミュニティ「IYNA Japan」を立ち上げたことを発表した。大学や研究者、企業とパートナーシップを結び、オンラインコンテンツを作成して、どこに住んでいても神経科学を学ぶ機会を提供しているという。

プレゼンする小澤美咲さん(杉浦美香撮影)

小澤さんは「最初は医者になりたかったけれど、勉強するうちに神経科学に関心を持つようになった」と話す。理系を学ぶうえでの女性の壁について「大学で電子工学を学びたいが、女性の割合は2割もなく、躊躇する空気がある」ハードルの高さを感じているが、自らが「変えていきたい」と意気込みを語った。

審査委員長で日米協会会長、藤崎一郎・元駐米大使は「プレゼンのテーマは2045年だが、そこまで待たなくていい。5年から10年で日本を変えてほしい」と全員にエールを送った。

ファイナリストと審査員、支えるスタッフも一緒に記念撮影におさまった(杉浦美香撮影)
コンテスト運営にはGEMの卒業生らがボランティアで参加していた(杉浦美香撮影)

筆者:杉浦美香(Japan 2 Earth編集長)

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