今やインドは東を向いて日本を望むより、変化と可能性がともに豊かに、しかも急速に生じつつある西方に注意を向けている。インドへの関心自体を薄めた日本政府には、そこが見えていない。

米ホワイトハウスで共同記者会見に臨み、握手を交わすトランプ米大統領とインドのモディ首相=2025年2月
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安倍晋三氏が政権を退きしかも亡くなってしまって以来、インドの対日関心は低下した感がある。
首相在任当時、安倍氏は日米豪印4国の安全保障をめぐる対話を創始し、地域を捉える新たな枠組みとして「アジア太平洋」に替え「インド太平洋」を打ち出した。
いずれも、インドの未来をいわば先物買いしようとする一種の投資だった。同国のナレンドラ・モディ首相はこれを大いに多とし、安倍氏との絆をとみに深めた。
インドの対日関心低下
その後の日印関係は、目立って減速しないかわり加速もない。無事というか、退屈な巡航状態だ。
今やインドは東を向いて日本を望むより、変化と可能性がともに豊かに、しかも急速に生じつつある西方に注意を向けている。インドへの関心自体を薄めた日本政府には、そこが見えていない。
4国の枠組みとしてインドの首都ニューデリーで当面の関心を集めるのは、むしろ「I2U2」だ。
筆者:谷口智彦(富士通FSC特別顧問、元内閣官房参与)
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2025年5月22日付産経新聞【正論】より
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