
パリで支援団体代表とともに記者会見するポール・ワトソン容疑者(中央右)=12月21日(三井美奈撮影)
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フランスに本部を置く国際刑事警察機構(ICPO)が、反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」創設者、ポール・ワトソン容疑者の国際手配を解除した。
SSは、日本をはじめ各国の捕鯨船に小型船で体当たりするなど、危険な妨害活動を繰り返してきた無法集団だ。ワトソン容疑者はその指示役を務めていた。日本の海上保安庁が傷害容疑などで逮捕状をとりICPOを通じて国際手配していた。
危険な活動家を野放しにする今回の解除は極めて不当で容認できない。ICPOは再び国際手配をかけるべきだ。日本政府はICPOに抗議し、手配させる必要がある。同時にあらゆる手立てを講じ容疑者の身柄を拘束しなければならない。
ICPOは国際手配の解除について、「事件の事実関係についての判断ではなく、デンマークが日本への身柄引き渡しを拒否したとの新たな事実を踏まえて決定した」と説明した。
これはおかしい。重要なのは「事件の事実関係」だ。ワトソン容疑者が関与したとされる平成22年の事件では、南極海で日本の調査捕鯨船団がSSメンバーの襲撃を受け、複数の負傷者が出た。ワトソン容疑者に法の裁きを受けさせるのが、当然ではないか。

ワトソン容疑者は昨年7月、日本の捕鯨船団を妨害するためデンマーク自治領グリーンランドに立ち寄ったところ、現地の警察に拘束された。日本側が引き渡しを求めたが、反捕鯨国であるフランスのマクロン大統領らが反対し、デンマークは12月に釈放していた。
国際手配の解除後、ワトソン容疑者は逃亡先のフランスで、SNSに「ついに私は自由だ」と書き込んだ。不法な活動を再び始めないか強く懸念する。
ICPOの措置について、林芳正官房長官は会見で「極めて遺憾だ」と述べた。海上保安庁の瀬口良夫長官も会見で「関係国に身柄引き渡しを求める方針に変わりはない」とし、捜査を続ける考えを示した。
ICPOと並んで問題なのはデンマークとフランスだ。危険な国際犯罪の取り締まりや日本との友好関係よりも、無法な容疑者をかばう行動をとるとは先進民主主義国の資格を疑わざるを得ない。法と正義を守る立場に戻ってもらいたい。
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2025年8月3日付産経新聞【主張】を転載しています
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