
印旛沼周辺の水路で特定外来生物「ナガエツルノゲイトウ」を駆除する参加者=千葉県佐倉市(鴨川一也撮影)
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外来生物法の施行から今年で20年になる。外来種の中でも特に人体や生態系、農林水産業に重大な悪影響を及ぼす特定外来生物の輸入や飼養を規制する法律だ。
この20年間にわたって市民団体や自治体が可能な範囲で駆除活動を展開してきたが、抜本解決には至っていない。
例えばナガエツルノゲイトウという特定外来生物の水生植物が関東以西の河川敷や湖沼、水路などで猛威を振るっている。水田に入り込むと地中に深く根を張って稲の収量を減らし、倒伏も招く。秋の刈り入れ時にはコンバインの作動まで妨げるので農家の打撃は深刻だ。
「地球上最悪の侵略的植物」とも言われる南米原産のこの水生植物は、日本の稲作を脅かす存在になりつつある。同じくオオバナミズキンバイも「最強・最凶」の外来水生植物として警戒されている。
特定外来生物ではアメリカザリガニやオオクチバスなどが有名だが、これらの水生植物はセイタカアワダチソウやブタクサ以上に日本の社会を揺るがす存在だ。静的な植物であってもあなどれない。外来生物法施行から20年を機に、侵略的な外来生物への認識を新たにし、被害拡大の抑止に努めたい。

外来種被害予防の三原則は「入れない」「捨てない」「拡(ひろ)げない」だが、完全な実現には達していない。
アルゼンチンアリやヒアリは国際物流の拡大で輸入貨物に忍び込んでやって来た。アメリカザリガニやアカミミガメは、飼育に飽きると捨てられた。オオクチバスやブルーギルの分布拡大は密放流によるものだ。
奄美大島のマングースのように駆除に成功した例もあるが、全国規模に拡散した繁殖力の強い外来種の根絶は困難で、被害を抑えつつ共存せざるを得ないのが現実だ。

外来生物による被害は農業に多いことも見逃せない。南米原産のスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)は稲の苗を食害し、哺乳類のヌートリアは野菜や稲を荒らす。アライグマも農作物を狙う。被害は地域経済の重荷になっている。
環境省によると令和6年末の時点で特定外来生物は162種類に上る。この約20年間で2倍に増えた。外来種の侵入圧は今もなお強まっている。
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2025年10月6日付産経新聞【主張】を転載しています
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