
会談前にフィリピンのマルコス大統領(右)と握手する石破首相=4月29日、マニラ(代表撮影・共同)
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石破茂首相がベトナムとフィリピンを訪れ、首脳会談を行った。訪問は東南アジア諸国への関与を強める中国を牽制(けんせい)する狙いがあった。
米国の関税措置をてこに中国が影響力を拡大しようとする中、日本は東南アジア諸国との連携を進めねばならない。
また、地域の平和を守っていくために、安全保障協力を確実に行う必要がある。
日比はいわゆる第1列島線を構成し、台湾の北と南に位置している。両国とも台湾有事と無縁ではない。
ベトナムは中国と陸続きで、1979年の中越戦争に象徴されるように、中国の脅威に常に直面してきた。越比はともに中国と南シナ海で領有権を巡り対立し、中国から軍事的に圧迫されている。
石破首相はフィリピンのマルコス大統領と会談し、機密情報の交換を可能にする情報保護協定の締結に向け、議論を始めることで合意した。軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が念頭にある。日本はフィリピンに警戒管制レーダーを輸出している。早期に締結し、円滑な実施へ体制を整えたい。
自衛隊とフィリピン軍が食料や燃料などの物資を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)についても、交渉入りで一致した。日比両政府は昨年7月、自衛隊とフィリピン軍の相互往来を容易にする円滑化協定(RAA)に署名した。ACSAも速やかに締結したい。

ベトナムのファム・ミン・チン首相との会談では、外務・防衛当局による次官級協議(2プラス2)の創設を確認した。日本が同志国の軍に防衛装備品などを無償供与する政府安全保障能力強化支援(OSA)の実施も検討することになった。
石破首相は越比両首脳と米国の関税措置についても協議した。トランプ米政権は中国製品が迂回(うかい)輸出されることを警戒している。このため、中国と経済的結びつきが強いベトナムに示した相互関税の関税率は46%と高い。
東南アジア諸国が中国に取り込まれないように、日本は努力を続けるべきだ。ベトナムには石破首相に先立ち、習近平中国国家主席が訪れた。経済的にもルール破りの常習国である中国を「自由貿易の旗手」扱いさせてはならない。
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2025年5月1日付産経新聞【主張】を転載しています
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