北海道・根室半島の納沙布岬(左下)沖に広がる北方領土=平成31年1月
This post is also available in: English
ロシアが不法占拠する北方領土の2つの無人島に、露政府が歴史上有名な正教司祭2人にちなむ名称を付けるとの政令を出した。
ロシアは北方領土の周辺海域で、日本を含む各国船舶の「無害通航権」を停止し、色丹島周辺で軍事演習を実施するとも通告している。
いずれも管轄権の主張を重ね、不法占拠を強める動きであり、容認できない。勝手に付けた島名を直ちに取り消し、北方領土から出ていくべきだ。
露政府の政令によると、命名したのは歯舞群島の2島で、「ニコライ・カサトキン」「イノケンティ・ベニアミノフ」とした。カサトキンは幕末以降、日本で布教した司祭で、東京・神田駿河台の「ニコライ堂」の創設者でもある。ベニアミノフは19世紀に樺太(サハリン)島を訪れた。
タス通信によると、2島の面積は計約2.2ヘクタールという。日本の外務省が現在、場所など詳細を確認中だ。日本政府は、ロシアに断固抗議するとともに、北方領土が日本固有の領土であることを、国際社会にもっと発信しなければならない。

ロシアは13日に無害通航権を停止すると通告し、色丹島、歯舞群島、国後島、択捉島の周辺や北海道東方などを指定海域とした。国連海洋法条約は、沿岸国の安全を侵害しない限り、他国領海を自由航行できる無害通航権を認めている。沿岸国は自国の安全保障に不可欠なら無害通航権を一時停止できるが、外務省によると、ロシアから具体的理由の説明はない。
ロシアは10日から11月1日まで、色丹島北方の区域で射撃演習を行うとも通告している。日本政府は「北方四島に関するわが国の立場に反する」と批判した。当然の対応だ。
北方領土周辺でのロシアの一連の動きは、ロシアのウクライナ侵略と無縁ではなかろう。フィンランドとスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)に入った結果、バルト海がNATO諸国に囲まれる形となった。NATOと関係を深める日本の周辺海域で、自国の存在を誇示する狙いがあるとみられる。
ロシアは北方領土に関し、「(日本は)地球上で唯一、戦後処理を完全に認めていない」と強弁を続けている。日本は国際世論を味方につけ、状況打開を図る必要がある。
◇
2025年10月27日付産経新聞【主張】を転載しています
This post is also available in: English

