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店舗に捜索に入る捜査員ら=2月5日午前、東京都港区(相川直輝撮影)
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警視庁公安部は、国の新型コロナウイルス対策の給付金をだまし取ったとして、東京・六本木の中国料理店などを経営する中国籍の会社社長と元社員の両容疑者を、詐欺容疑で逮捕した。
通常、給付金詐欺などの経済事件は刑事部の捜査2課が担当するが、この事件では公安部が捜査にあたった。公安部には外事課があり、外国機関の諜報活動や国際テロリズム、戦略物資の不正輸出、不法滞在などを担当とする。
2人の逮捕容疑は、元社員が実際には勤務しているのに休業したと偽り、給付金を13回にわたって申請し、約375万円を詐取した疑い。他にも複数の従業員について虚偽申請させていたとみられ、不正受給額は3億円に上る可能性がある。
この社長は在日中国大使館で3等書記官として勤務していたこともあるとされる。店のホームページには、「歴代首相を始めとする日本政財界、中国大使館などによくご利用されています」との一文もあった。
公安部は2023年にも、中国出身者と日本企業の交流促進に取り組むとする一般社団法人のビルを捜索し、翌年、同法人の元幹部とされる中国人2人を詐欺容疑で書類送検=不起訴=した。
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このビルは、スペインのNGO「セーフガード・ディフェンダーズ」が、中国が世界各地に設置した「海外警察拠点」の一つに名指ししていた。
同NGOによると「海外警察拠点」は世界50カ国、100カ所以上にあり、国外の中国人の政治活動の監視や帰国の強制などの非公然活動を行っているとされる。米国やドイツ、オランダなどで摘発され、閉鎖命令も受けている。
日本には、こうした諜報活動を直接取り締まる法律がなく、現行刑法の捜査対象である詐欺事件の摘発などから、その背景や活動実態を解明せざるを得ないのが実情である。
2024年に送検した人物は、自民党の参院議員事務所に一時期、「外交顧問兼外交秘書」として出入りしていたことなどが判明した。今回の事件でも背景を徹底的に解明してほしい。
同時に「スパイ防止法」の創設も急ぐべきである。同法案は1985年に議員立法で提出されたが、同年に廃案となった。いつまでも日本が「スパイ天国」でいいはずがない。
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2025年2月12日付産経新聞【主張】を転載しています
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