
産業技術総合研究所の「量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)」本部棟落成式で、テープカットに臨む石破首相(中央)ら=5月18日午後、茨城県つくば市(代表撮影)
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次世代計算機として期待される「量子コンピューター」の実社会での応用や産業化を目指した新拠点「量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)」が産業技術総合研究所(茨城県つくば市)に完成し、石破茂首相らが出席した落成式が5月18日に行われた。
量子コンピューターは光や原子、電子など「量子」と呼ばれる極めて小さな粒子を利用した計算機で、スーパーコンピューターで何年もかかる計算を瞬時に実行できる。新薬開発や金融資産運用といった幅広い分野で活用が期待される。

新拠点は620億円をかけて整備され、超電導と中性原子方式の量子コンピューターが、それぞれ設置された。産総研によると、異なる方式が一つの施設にそろうのは珍しいという。いずれも画像処理装置を搭載したスーパーコンピューターと接続でき、より高度な計算が可能になる。
各種の研究開発から事業創出までを一体的に推進し、日本の国際競争力を高めることを狙う。産総研の石村和彦理事長は落成式で「量子技術のグローバルイノベーションの拠点となるよう全力で取り組む」と語った。
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石破首相、開発・人材支援強化を表明
石破茂首相は研究施設を視察後、量子技術の産業化に向け、技術開発や人材育成の支援を強化する方針を表明した。国際競争が激しさを増す次世代技術の産業化で先行したい考えだ。
首相は、量子物理学の基礎理論が構築されて100年となることから「今年を『量子産業化元年』と位置づける」と述べた。
具体的には、スマートフォンやパソコンなどの基本ソフト(OS)やアプリを開発するスタートアップ(新興企業)への開発支援、大学と連携した人材育成プログラム作りに取り組む。
首相が視察したG-QuATには3方式の量子コンピューターを設置。G-QuATに入居できるスタートアップ・中小企業の数を今後3年間で現在の8から5倍以上に拡充する。
現在10カ国と結んでいる量子分野の連携協定について、新たに年内に5カ国との締結を目指す。日本企業の海外進出を後押しするため、日本の技術に有利な国際規格作りにも取り組む。
首相は、地方で次世代産業を創出し、政権の看板政策「地方創生」を前進させたい考えだ。
(産経新聞)
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