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中国語の海上ブイ設置に言及した沖縄県の玉城デニー知事(大竹直樹撮影)
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中国政府が対日宥和(ゆうわ)のつもりで行ったのであれば、いかにも下手な策である。日本政府はいささかも評価してはならない。
中国が尖閣諸島(沖縄県)沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内に設置していたブイを撤去したことが分かった。
尖閣沖のブイは海流や気象などを観測するものとみられ、令和5年7月に中国の海洋調査船が設置したが、日本政府は容認していない。他国のEEZ内で無断で海洋調査を行うのは国連海洋法条約違反である。日本政府は中国に繰り返し抗議し撤去を求めていた。
中国外務省の報道官はブイを移動させたことを認め、「関係部門が自主的に技術的な調整を実施した」と語った。
国際法に違反しているのに反省も日本への謝罪の言葉もない。到底容認できない。
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その上、中国の国際法違反のブイはまだある。昨年12月に見つかった与那国島(同県)沖の日本のEEZ内の中国ブイは今もそのままだ。日本の海を脅かし、台湾有事や南西諸島有事でも悪用される恐れがある。
同月に訪中した岩屋毅外相は撤去を求めたが、中国政府は無視している。
林芳正官房長官は2月12日の会見で、与那国島沖の中国ブイについて「即時撤去を強く求める」と述べた。外交ルートで抗議を続けるのは当然だが、それだけではいけない。国際法違反のブイは日本の手でできるだけ速やかに撤去すべきだ。費用は中国に請求すればよかろう。
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同様の問題ではフィリピン政府が一昨年、中国が南シナ海に設置した浮遊式障害物を撤去した。フィリピンができたのになぜ日本はできないのか。
中国が今回、尖閣諸島沖のブイを撤去した背景には、トランプ米政権の発足により米中対立が強まる中、日本との関係改善を図る狙いがあるのかもしれない。だが、不当なブイを「技術的な調整」を名目に撤去しても日本国民の対中不信は好転するはずもない。
尖閣周辺には中国海警局の武装船が連日出没し、領海侵入を繰り返している。中国が非を認めない以上、今後も状況次第で国際法違反のブイを設置する恐れがある。それを防ぐためにも、日本政府は与那国島沖のブイを撤去すべきだ。
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2025年2月16日付産経新聞【主張】を転載しています
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