
JAPAN Forwardとのズームインタビューに応じるボルトン氏
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今年でウクライナ紛争は3年目に突入するが、その終結の行方はいまだ見通せない。米国の仲介による最近の部分停戦は、ロシアとウクライナ双方のエネルギーインフラへの攻撃を停止させ、緊張の緩和を図る狙いがあった。
しかし、その停戦も早くも火種となっている。両国がすでに合意違反を指摘しており、その正確な条件をめぐっても対立が続いている。
一方、欧州情勢が一層不透明さを増す中、アメリカの東アジア同盟国の間では、米国の地域安全保障への関与が揺らぐのではないかとの懸念が広がっている。
JAPAN Forwardの独占インタビューで、ジョン・ボルトン元米国家安全保障顧問は、30日間の部分停戦の脆弱性、ウクライナ紛争の力学の変化、そしてトランプ大統領の外交政策が与える影響について語った。ボルトン氏は、第一次トランプ政権で最長期間となる国家安全保障顧問、ジョージ・W・ブッシュ政権下で国連大使を歴任した。
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ウクライナとロシアの部分停戦をどう評価するか?
停戦はうまくいっていないと思う。停戦の目的は互いのエネルギーインフラへの攻撃を阻止することだが、明らかに双方の攻撃は続いている。サウジアラビアでは交渉が続いており、黒海での停戦の可能性についても月曜日から火曜日にかけて議論が行われている。しかし、ロシア側は焦っている様子は見受けられない。彼らの見解は、戦場での状況が自分たちに有利に進んでいると思っているのであろう。

ウラジーミル・プーチンは、ドナルド・トランプからの好意や、トランプがウクライナを犠牲にしてこれまでロシアに行った多くの譲歩を無駄にしたくないと考えているはずだ。プーチンはその点に敏感でありつつも、より実質的な停戦を急ぐつもりはない。期停戦がロシアの利益になるとは考えていないのだ。
停戦が持続的な和平合意に発展する可能性は?
短期的には困難である。最終的に完全な停戦に至る可能性はあるが、それが24時間以内や来週中に実現するとは考えにくい。もっと長い時間が必要になる。
プーチンは今でも、重要な案件についてはトランプと直接話したいと考えているはずだ。なぜなら、ロシアの目的を達成するうえで、下級の交渉官や外相、さらに下の人物に任せるよりも、トランプを巧みに操り、彼から望むものを引き出せると考えているからだ。
和平に向けて、より実行可能な選択肢があるのか?
ウクライナ側としては、ロシアがウクライナ領土の20%を支配したまま終戦することに大きな関心があるとは思えない。その場合、事実上ロシアとウクライナの間に新たな境界線が生まれ、ロシアは今回の戦争で被った莫大な損失から立ち直るための1~2年の猶予を得ることになる。
ウクライナ側は、アメリカやヨーロッパが引き続き軍事・経済支援を行い、戦場の流れを変えることを期待している。

ウクライナは昨年、ロシア国内で一時的に確保した領土[クルスク州]を失った。そのため、双方がより有利な交渉の立場を確保しようと動いているのだ。
米国とNATOが武器供給を続ければ、ウクライナは失った領土を取り戻すことができるのか?
可能性はある。彼らがそれを望んでいるのは確かだ。3年間の戦争の全過程を振り帰ってみよう。ウクライナは、戦争初期にロシア軍が奪取した領土のかなりの部分を奪還した。当時、西側の情報機関を含む多くの人々は、ロシアが数週間以内に勝利すると予想していたが、ウクライナ軍はその見通しを覆し、ロシア軍を押し戻した。
停戦を堅持するため、米軍や欧州軍の派遣は避けられないか?
平和維持軍は、その任務を明確に定めなければならない。例えば、平和を執行することにあるのか?すなわち、一方が和平に違反した場合、武力行使を含む措置を講じるのか。それとも、伝統的な国連平和維持軍のように、停戦を見守ることが任務となるのか。つまり、脅威に直面した場合にのみ自衛のために武力を行使し、その違反行為をニューヨークの国連本部に報告するという形になるのか。

現在進行中のヨーロッパ諸国での議論を見る限り、地上軍の駐留の可能性はますます低くなっている。この議論を主導してきたイギリスでさえ、今では海軍と航空部隊に関する話が中心となっている。これは相当な規模かもしれないが、前線に沿った実際の平和維持軍とは異なる。
トランプ政権の東アジアへの関与後退の可能性について、日本と韓国は懸念すべきか?
米国、そして米国民は、既存のコミットメントを強く支持していると考える。問題はドナルド・トランプ自身であり、彼があと46カ月も大統領であるという点だ。これはかなり重大な問題である。
しかし、議論は依然として宙に浮いたまま。例えば、AUKUSグループや、日韓が米国と共に3カ国軍事演習を実施することで合意したこと。日本はまた、今後5年間で防衛費をGDPの2%に増やすと約束している。これらはすべて、トランプ大統領に対して、同盟関係が理にかなっているという強力な主張となっている。先ほども言ったように、圧倒的多数のアメリカ人はすでにアメリカの関与に同意している。ただ、さらなる説得が必要である。
最近のイエメンをめぐるシグナルのチャットリークから、バンス副大統領のような人物がヨーロッパに対してまったく関心を示していないことが明らかになった。しかし、中国の脅威を重視しているため、彼らはアジアに関しては異なる立場を取る可能性がある。したがって、この問題にも対処することが重要だ。
日韓では、独自核武装や米戦術核受け入れなどに関する議論が行われいる。どう思うか?
前述のように、アメリカの決意とコミットメントに対する信頼の欠如が問題となっている。特に核兵器に関しては、アメリカの核戦力が提供する拡大抑止力への信頼が欠けている。
ここでも、トランプが並外れている。ほとんどのアメリカ人は、拡大抑止力がアメリカの国家安全保障に貢献し、世界の核拡散に対抗するために重要だと考えている。

日本や韓国、オーストラリアが核兵器を保有すること自体を懸念しているわけではない。それは心配すべきことではないと思う。私が懸念しているのは、他の国々がそれを見て、「核兵器を持つ国が増えれば、私たちにも核兵器が必要だ」と主張することだ。それが核拡散の連鎖を生むのである。だからこそ、日韓米の2国間協議、あるいは3国間協議において、この問題を真摯に直視すべきである。米政府はバイデン政権の任期末に、韓国を安心させるためにいくつかの措置を講じた。
私は、北朝鮮に対する抑止力として、[朝鮮]半島への戦術核配備の再開を検討してもよいと考えている。ただし、私たちは非公開の協議を行い、そこで双方がこの問題について真剣に話し合うことが重要だ。
拡大抑止力が疑問視されている現状を踏まえ、米政府が本気であることを示すことは、アメリカにとって利益となる。それは、ドナルド・トランプ大統領の残りの任期にとどまらず、今後数十年間にわたり中国や北朝鮮と対峙していく上で、すべての人の安全を確保するためでもある。
聞き手:吉田賢司(ジャーナリスト)
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