自民党総裁選の候補者や閣僚、与野党の幹部は、日本の平和と安全のため、安全保障についてもっと発言すべきだ。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が「絶対に核を手放さない」と演説したことを傍観してはならない。
North Korea ICBM

2023年7月、北朝鮮の軍事パレードに登場したICBM「火星18」=平壌(朝鮮中央通信=共同)

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自民党総裁選の候補者や閣僚、与野党の幹部は、日本の平和と安全のため、安全保障についてもっと発言しなければだめだ。

たとえば、北朝鮮の核・ミサイル問題についてである。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が9月21日の最高人民会議で「絶対に核を手放さない」と演説した。米国が北朝鮮への非核化交渉を放棄して「真の平和共存を望むなら米国と向き合えない理由はない」とも語った。

これをいつもの強硬姿勢だとして傍観してはならない。米朝首脳会談の開催で、日本の安全保障を損なうような話が出てくる恐れがあるからだ。可能性は低くとも、そのような恐れは取り除いておくべきだ。

米ホワイトハウスでトランプ大統領(右)と会談する韓国の李在明大統領=8月25日(ロイター)

10月31日から韓国でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議がある。米国のトランプ大統領も出席の見通しだ。

韓国の李在明大統領は国連総会の一般討論演説で、米国など国際社会と北朝鮮の関係正常化について「積極的に支持、サポートする」と語った。韓国政府が板門店での米朝首脳会談を画策しているかもしれない。

米政府は北朝鮮を核保有国として認めてこなかった。ただし、トランプ氏の外交には不安がつきまとう。日本人拉致事件解決への協力を表明したことは高く評価できる一方、核・ミサイルを巡っては問題発言をしてきた。今年3月には「北朝鮮が多くの核兵器を保有している」と述べ、核保有国と事実上認めるような発言をした。8月には金氏とは良好な関係にあるとし「今年中に会いたい」と述べた。第1次政権当時には、米本土に届かない射程の北朝鮮ミサイル発射を問題視しないような言動をとったこともある。

核兵器研究所、核関連分野の科学者、技術者と核物質および核兵器生産に関する協議会を指導する金正恩朝鮮労働党総書記=9月26日(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

金氏は最高人民会議で「まだ個人的にはトランプ氏には良い思い出を持っている」とも演説した。米朝対話の再開に意欲的なトランプ氏に、自国の核保有を容認させたいという思惑がみてとれる。

どのような形であれ、米国が北朝鮮の核・ミサイル戦力保有を認めれば、日本の安全は一層脅かされる。自民総裁選候補や閣僚、与野党の幹部は今こそ、北朝鮮の核・ミサイル戦力保有は絶対に許されないと強く述べてもらいたい。北朝鮮のみならずトランプ氏にもその声を届ける必要がある。

2025年9月28日付産経新聞【主張】を転載しています

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