一般的な小惑星のイメージ (欧州宇宙機関提供)
This post is also available in: English
小惑星が地球に衝突して大災害が起きるのを防ぐ「地球防衛」の機運が高まっている。国際協力の議論を加速し備えを固めたい。
小惑星の衝突は極めてまれだが過去にロシアなどで起きており、都市を直撃すれば被害は計り知れない。海に落ちれば大津波が発生する。最悪の場合は地球規模の被害をもたらす究極の自然災害だ。
今年1月には直径数十メートルの小惑星が2032年に1・3%の確率で地球に衝突する可能性が判明し緊張が高まった。その後の観測で衝突しないと分かったが、未知の小惑星が衝突するリスクは今後も否定できない。

地球防衛はSF映画の題材にすぎなかったが、ここにきて現実味を帯び始めた。米航空宇宙局(NASA)が3年前、探査機をぶつけて小惑星の軌道を変える宇宙実験に初めて成功し、地球への衝突回避が技術的に可能なことを実証したからだ。
軌道変更には探査機を何機もぶつける必要があり、国際協力が欠かせない。米欧日などの宇宙機関でつくる国連の組織がさまざまなケースを検討しているが、どの国が探査機をぶつけるのかや費用負担など具体的な実施体制は決まっていない。
危機が迫ったら直ちに対処できるように、平時のうちに国際協力や意思決定のルールを決めておくべきである。
探査機はやぶさと後継機で実績のある日本は、小惑星探査で世界最高の技術力を誇る。これを発展させて小惑星の軌道を変える技術を獲得し、地球防衛に参加することは十分に可能だ。人類の安全保障に貢献する大きな意義があり、実現を目指して技術開発を進めてほしい。

地球防衛は軌道変更が中途半端になり、本来は衝突しない国に小惑星が落下して被害が生じた場合の責任の所在など法的に未解決の課題も多い。
直径1キロ以上の小惑星や数百メートル規模のものでも衝突まで時間的猶予がない場合は核爆発の威力で軌道変更しないと回避できない。だが宇宙空間での核爆発は宇宙条約や部分的核実験禁止条約で禁じられており、どう対応するのか議論が必要だ。
小惑星による災害は地震などと違って日常的な心配は不要だが、潜在的には重大な脅威である。回避できれば歴史的な偉業にもなる。世界が協調して立ち向かう決意が求められる。

◇
2025年11月20日付産経新聞【主張】を転載しています
This post is also available in: English

