米大リーグ、ブルージェイズとのワールドシリーズ第7戦を制して2連覇を達成し、喜ぶ山本由伸(中央)らドジャースの選手たち(共同)
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なんと劇的な幕切れだろう。米大リーグのワールドシリーズ(WS)は最終第7戦で延長の末にドジャースが敵地トロントでブルージェイズを破り、連覇を達成した。MVPはもちろん、4勝のうち3勝を挙げたエース、山本由伸である。
第2戦でポストシーズン(PS)2度目となる完投勝利を挙げた。第6戦も勝利投手となったのが前夜のことで、連日の登板となった最終戦も九回のマウンドに上がり、延長十一回までを無失点で投げ切った。
分業制が確立された現在の大リーグでは極めて異例の敢闘ぶりで、今シリーズでも二刀流で活躍した大谷翔平とともに「野球の歴史を変える存在」として全米が大絶賛している。

なかでも全米を感動させたのは、マウンドに立たなかった第3戦だった。両軍とも譲らぬ熱戦は延長十八回に及び、ブルペンには十九回の登板に備えて肩を作る山本の姿があった。第2戦で完投していた山本はベンチでロバーツ監督に直訴し、ブルペンに向かったのだった。
昨年WSのMVP、フリーマンはブルペンを見て「ここで山本を投げさせるわけにはいかない」と、中越えにサヨナラ本塁打を放った。野球は時に、こんな素敵(すてき)なドラマを用意する。その中心に、日本選手が存在したことが誇らしく、うれしい。
初めて二刀流でPSに臨んだ大谷は投げて2勝1敗、打席でも8本塁打の大暴れで、呼称はどうやら「地球上で最高の選手」に落ち着いた。WSを戦った両指揮官が同じ言葉で大谷を形容した。
シーズン中は故障に苦しんだ佐々木朗希も、PSでは3セーブ、防御率0点台で新たな守護神に躍り出た。
ドジャースではかつて、野茂英雄が「トルネード旋風」でロサンゼルスのファンを熱狂させた。WSではヤンキース時代の松井秀喜がMVPを獲得した。山本は日本選手として2人目の快挙である。イチローは数々の安打記録を塗り替えた。
日本の3選手が大いに貢献したドジャースの連覇は、こうした先輩らの活躍の延長線上にある。共通するのは、より高いレベルのステージを目指して挑戦する勇気であり、その成果を目の当たりにして湧き上がるのは「日本人はできるぞ」という自らへの励ましである。

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2025年11月3日付産経新聞【主張】を転載しています
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