
特別展「NEGORO 根来 ― 赤と黒のうるし」は大阪市立美術館で9月20日~11月9日開催。輪花盆(りんかぼん)大阪市立美術館(佐々木香輔撮影)
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実用性に徹したシンプルで洗練されたかたちと、長期の使用に耐える堅牢なつくり。そして、鮮やかな朱漆の上塗りが摩耗した下から中塗りの黒漆が覗く枯淡の美―。「根来(ねごろ)」として知られる朱漆器の名品を一堂に集め、その魅力の淵源を探る特別展「NEGORO 根来 ― 赤と黒のうるし」を9月20日~11月9日、大阪市天王寺区の大阪市立美術館で開催します。

「根来」は一般的に、堅牢な下地を施した木地(きじ)に黒漆の中塗りと朱漆を上塗りした漆器を指します。古くは寺社で什器として使われ、中世に繁栄を誇った紀州(現在の和歌山県)の根来寺で作られたとされることから、この名で呼ばれていますが、その関係は定かではありません。
根来寺(和歌山県岩出市)は平安時代末期の12世紀に高野山金剛峯寺の座主も務めた覚鑁(かくばん)が開創し、13世紀末からは新義真言宗の教学の拠点として多くの学僧が学びました。室町時代には数千の塔頭(たっちゅう)が軒を連ね、広大な寺領を抱える一大聖地として栄えましたが、強大な宗教勢力を警戒した豊臣秀吉によって、天正13(1585)年に滅ぼされました。
当時、国内屈指の巨大寺院であった根来寺の名は、「根来で作られた」とされる朱漆器の呼称として語り継がれます。その味わいは明治以降の文人たちにも愛され、芸術品として鑑賞の対象となりました。近年では黒澤明や白洲正子らも根来を愛蔵。彼らの旧蔵品も展示し、文化人らを魅了した朱と黒のうるしの美をじっくり味わっていただけます。

一方で「根来に根来なし」と言われるように、少なくとも秀吉の根来攻め以降、根来寺の周辺では漆器は製造されておらず、「根来」の実態は謎に包まれていました。特別展では、漆器と日本人の関わりから振り返り、「根来」の歴史を紐解いていくことで、「根来」の実態に迫ります。
9月28日午前11時からは、中世の根来の技法を現代に「根来塗」としてよみがえらせた根来塗曙山会主宰の池ノ上辰山さんを招き、講演会「技法から見た根来―根来と他漆器の違い―」を開催。
10月11、18日は同展の担当学芸員、26日には大阪市立美術館の内藤栄館長による見どころレクチャーをいずれも午後2時から行います。
会場はいずれも美術館1階のパブリックスペース「じゃおりうむ」。予約不要・参加無料ですが、当日の特別展観覧券の提示が必要。当日開始30分前から、じゃおりうむ前で整理券配布。
(産経新聞)
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特別展「NEGORO 根来 ― 赤と黒のうるし」
- 【会期】2025年9月20日(土)~11月9日(日)。月曜休館(祝日は開館し、翌平日休館)。9月22日は開館。
- 【会場】大阪市立美術館(天王寺公園内)
- 【主催】大阪市立美術館、産経新聞社
- 【協賛】サンエムカラー、YAMAGIWA
- 【後援】岩出市教育委員会、公益財団法人大阪観光局
- 【特別協力】新義真言宗総本山根来寺
- 【協力】根来塗曙山会
- 【公式ページ】https://www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/negoro
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