
2024年度決算を発表する日産自動車のイバン・エスピノーサ社長=5月13日午後、横浜市西区(松本健吾撮影)
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日産自動車が2万人の人員削減などを柱とする大規模なリストラ策を発表した。
人員削減の規模は国内外のグループ従業員の約15%に当たり、令和9年度までに実施する。世界で17カ所ある車両生産工場についても国内を含めて閉鎖を進め、10カ所に絞り込む。
日産が苦境に陥っているのは世界の二大市場である米国と中国で販売不振が続いているためだ。米国市場に人気のハイブリッド車(HV)を投入できていないなど、商品ラインアップに問題を抱えている。
工場の稼働率低迷やリストラ費用の計上もあって、7年3月期決算では純損益で6708億円の赤字を余儀なくされた。商品力の強化には時間が必要だ。業績の立て直しには過剰な設備と人員を適正化することが欠かせない。リストラが国内に及ぶのは残念だがやむを得まい。

イバン・エスピノーサ社長は会見で、人員削減について「日産の存続のために必須の対策だ」と述べた。その言葉通り、生き残りに向け覚悟をもって再建計画の完遂に取り組んでもらいたい。
100年に1度の変革期とされる自動車業界は、電気自動車(EV)を得意とする中国メーカーの台頭もあって競争の構図が大きく変化している。トランプ米政権が導入した自動車の追加関税の影響も懸念されており、日産も8年3月期で最大4500億円の営業減益要因になるとの見通しを示している。

追加関税によって収益が圧迫されるのは日産だけではない。ホンダも同期で営業利益を6500億円押し下げる要因になるとし、前期から大幅な減益を見込む。
日産とホンダは、計画していた経営統合が2月に破談となったものの、EVや「SDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)」と呼ばれる次世代車分野での戦略提携の枠組みは維持した。
エスピノーサ氏は、さらに米国でホンダとの協業を検討していることを明らかにした。日産の米国工場でホンダ車を生産することなどを想定している。
経営統合まで踏み込まなくても、互いの経営資源を利用することで業績改善につなげる方策はあるはずだ。両社に限らず日本メーカーは知恵をしぼり、基幹産業を守ってほしい。
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2025年5月15日付産経新聞【主張】を転載しています
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