
福井謙一氏の書が入った額の前で、研究への思いを話す北川進さん=京都市左京区(寺口純平撮影)
This post is also available in: English
スウェーデン王立科学アカデミーは10月8日、2025年のノーベル化学賞を、微細な穴を無数に持つ新しい有機材料である「多孔(たこう)性金属錯体(さくたい)」を開発した京都大特別教授の北川進氏(74)ら3氏に授与すると発表した。気体の貯蔵などに役立つ次世代の多孔性材料で、環境やエネルギー問題などの解決に新たな道を開いた功績が評価された。
受賞が決まったのは北川氏のほか、メルボルン大学のリチャード・ロブソン教授、カリフォルニア大学バークレー校のオマー・ヤギー教授。
日本のノーベル賞受賞は6日に生理学・医学賞の受賞が決まった坂口志文氏に続き、外国籍を含め計30人と1団体となった。
活性炭のように小さな空洞がたくさん開いた多孔性の材料は、有害物質や悪臭の原因物質などの吸着に広く活用されているが、骨格が無機物でないと不安定で壊れやすかった。

北川氏が開発した多孔性金属錯体は金属イオンを中心に有機化合物が格子状に並んでおり、ナノサイズ(ナノは10億分の1)の微細な穴を持つ基本骨格がいくつもジャングルジムのように組み上がっている。
北川氏は東京都立大教授だった平成9(1997)年、気体を吸着する多孔性金属錯体を作製したと世界で初めて発表。気体を自在に取り込んだり、放出したりすることが可能で、金属イオンや有機物の組み合わせによって多様な機能を発揮できる。
空気や水の中から窒素や二酸化炭素など特定の気体だけを集めて貯蔵・濃縮できる。環境汚染物質の吸着や次世代エネルギーとして注目される水素ガスの貯蔵にも応用でき、地球温暖化対策などに役立つ革新材料として期待されている。
京都大百周年時計台記念館のホール(京都市左京区)では、数十人の報道関係者や大学職員が発表前から待機し、発表を見守っていた。午後6時45分すぎに北川さん受賞決定の一報が入ると、職員たちからは「やった」「よっしゃ」と歓声と拍手が起こった。

授賞式は12月10日にストックホルムで行われ、賞金計1100万スウェーデンクローナ(約1億7800万円)が贈られる。
(JAPAN Forward、産経新聞)
This post is also available in: English