
石川県穴水町の乙ケ崎トンネル内に設置された、トキが羽ばたく姿をイメージしたイルミネーション=6月18日午後
This post is also available in: English
石川県・能登半島で令和8年度に実施される国の特別天然記念物トキの放鳥に向け、県の第三セクター「のと鉄道」は6月18日、トキが羽ばたく姿をイメージしたイルミネーションをトンネル内に設置した。県は能登半島地震からの復興プランで放鳥を象徴的プロジェクトと位置付けており、イルミネーションにも「能登を勇気づけたい」との思いが込められた。

設置されたのは、地震で被災後に復旧した乙ケ崎トンネル(穴水町)の側面。横2メートル、縦1メートルの装置に約2800個の発光ダイオード(LED)光源を付け、羽ばたく様子を表現している。
のと鉄道の中田哲也社長(62)は「新たなシンボルになり、子どもたちも楽しんでくれるはず」と期待。イルミネーションを制作したワクラ村田製作所の高宮秀樹さん(52)は「トキを見て、元気になってほしい」と話した。
能登は、本州で最後に野生のトキが保護された地。日本産のトキはすでに絶滅した。新潟・佐渡島で毎年放鳥されているのは、中国から贈られたペアの子孫で、野生の個体は500羽超まで回復したとみられる。次は能登で放鳥を―。トキの電飾に込められた願いである。

トキはドジョウやタニシなど水辺の生き物を主な餌にする。石川県は来年度の放鳥を目指しており、トキを受け入れる能登の各地では、地震後に面積を減らした水田などの整備を急ぐ。コメ不足が影を落とす世の中には、二重に明るい話題だろう。
来年のいまごろは、能登の空にトキが羽ばたいているかもしれない。その裏側で流された地元の方々の汗を忘れまい。トキの電飾を、ご覧になりたい方はぜひ現地へ。一人一人の思いが能登の元気につながる。
(産経新聞)
This post is also available in: English