Total Views:5  (last 5 days) 
---- Daily Views ----
array(2) {
  ["2025-11-05"]=>
  int(1)
  ["2025-11-06"]=>
  int(4)
}
スポーツに医学、歌舞伎、化学、服飾デザイン、民俗学、美術など多彩な分野から今年も文化勲章の受章者が選ばれた。各分野のさらなる発展に尽力していただきたい。
Order of Culture recipients 2025

文化勲章親授式の後、記念撮影におさまる(左から)小松和彦さん、山本尚さん、コシノジュンコさん、川島康生さん、辻惟雄さん、王貞治さん、片岡仁左衛門さん、北川進さん=11月3日午前、皇居・宮殿東庭(梶山裕生撮影)

This post is also available in: English

スポーツに医学、歌舞伎、化学、服飾デザイン、民俗学、美術など多彩な分野から今年も文化勲章の受章者が選ばれた。

文化とは多岐にわたる人間の営みの成果である。その発展に顕著な功績をあげた人に授与される最高位の勲章だ。文化の日を迎え受章を寿(ことほ)ぐとともに、各分野のさらなる発展に尽力していただきたい。

その一人、歌舞伎の重要無形文化財保持者(人間国宝)でもある片岡仁左衛門さんは戦後の昭和24年に初舞台を踏んだ。当時、歌舞伎は存続の危機にあり「若いときはこの仕事から去らなければいけないかという時期もあった」という。

文化勲章を受章した歌舞伎俳優の片岡仁左衛門さん(相川直輝撮影)

最近、映画「国宝」の人気もあって業界はにぎわっているようだが、歌舞伎でもその歴史は山あり谷ありだ。伝統を守る一方で時代の変化にも対応し、芸や技術を次世代に引き継ぐのは簡単ではない。

そんな中、人間国宝の制度にも変化があった。これまで芸能や工芸技術が対象だったところに、食などの「生活文化」を加えるよう文化審議会が文部科学相に答申した。制度の見直しは実に半世紀ぶりだ。

早ければ来年度にも、料理人や杜氏(とうじ)といった分野から人間国宝が誕生する可能性がある。

発酵中のもろみを混ぜる蔵元の男性=兵庫県明石市

いわゆる人間国宝は、歴史や芸術といった観点から価値が高い無形の「わざ」を高度に取得した個人のことだ。そのわざの向上と後継者育成を図って認定され、国は1人当たり年200万円の特別助成金を出して支援している。

今回の制度見直しの背景には世界で高まる日本の食文化への関心と評価があろう。「和食」に続き昨年は「伝統的酒造り」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に登録された。一方で、全国の日本酒の出荷量は他のアルコール飲料との競合や後継者不足などもあって減少を続けている。

食文化の担い手に人間国宝が生まれれば、料理人らの地位向上につながる。後継者育成にも大きな弾みとなろう。文化の発展に人づくりは欠かせない。

11月3日は明治天皇の誕生日であり、昭和22年まではその遺徳をしのぶ祝日「明治節」だった。23年に文化の日となり「文化をすすめる日」とされるが、その歴史も忘れることなく一層の日本文化促進に努めたい。

明治天皇

2025年11月3日付産経新聞【主張】を転載しています

This post is also available in: English

コメントを残す