和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」で飼育されるジャイアントパンダ全頭の中国返還が決まった。大江康弘白浜町長が産経新聞のインタビューで、台湾との結びつきを強めていく方針を示し、「同じ価値観を持つ地域と向き合いたい」と語る。
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ジャイアントパンダ「結浜」を見るため訪れた大勢の観光客=5月3日午後、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールド

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和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド(AW)」で飼育されるジャイアントパンダ全4頭の6月末の中国返還が決まった。町の観光客誘致に貢献したパンダは不在となる。昨年5月に白浜町長に就任した元参院議員の大江康弘氏は産経新聞のインタビューで台湾との結びつきを強めていく方針を示し、「同じ価値観を持つ地域と向き合いたい」と語る。

>>「政治に左右されない観光資源生かす」パンダ・ロスに臨む和歌山県白浜町の大江町長(上)

パンダは政治的駆け引き

──4頭返還に白浜町を地盤とした自民党の二階俊博元幹事長の引退の影響は

「あったでしょうね。あれだけ中国と太いパイプを持ち、首相の次に習近平国家主席に会えるといわれる人物だ。二階先生が現職であれば、更新時期が来たからといって全頭返すことにはならなかっただろう」

──超党派の日中友好議員連盟(会長・森山裕自民党幹事長)は4月27日~29日に訪中し、中国共産党幹部らに新たなパンダの貸与を打診した

「実はパンダが戻るというニュースが流れた24日夜、友人の国会議員から『連休中に森山幹事長や小渕優子組織運動本部長が中国に行く。その際に契約延長をお願いしてもらおうか』と電話があった。こちらの事情をおもんぱかってくれたわけだが、『それはいい』と遠慮した」

──なぜか

「私としては何が何でもパンダを戻さなければいけないということにはならない。AWから『(契約延長の働きかけを)手伝ってくれ』と求められれば別だが、基本的にAWと中国のマターだ。AW側と話し合う中で『政治的な関与はしてほしくない』というニュアンスも感じていた」

中国共産党中央対外連絡部の劉建超部長(右端)と握手する日中友好議員連盟の森山裕会長=4月28日、北京(代表撮影・共同)

──森山氏の訪中直前に4頭返還が発表された

「われわれの慌てぶりを予想した上でのことだと思う。中国側とすれば自分たちで(政治的駆け引きの)ボールを持っておこうとしたのだろう。確かに4頭返還の衝撃は大きい。大型連休前後は駆け込みでパンダを多くの人が見に来た」

中国より台湾と

──大江氏が町長就任前の令和3年1月、町はパンダ繁殖研究基地のある中国四川省成都市成華区と姉妹都市提携を目指して覚書を交わした

「今年4月に成華区から共産党の方が来て、姉妹都市を目指していこうと言われたが『なかなか難しい問題がある』と答えておいた。姉妹都市までのめり込む考えはない」

──5月16日には南紀白浜空港と台湾を結ぶチャーター便が飛ぶ。日本航空として初めてとなる

「頼みは台湾だと思っている。台湾は自由、民主、人権と日本と同じ国家の基本を持つ。そうした価値観を持っている国(地域)と向き合っていきたい」

台湾の蕭美琴副総統(大内清撮影)

──具体的には

「訪台して5月22日に蕭美琴(しょう・びきん)副総統と面会する。国会議員時代からの知り合いで、白浜の事情を説明して『力を貸してほしい』としっかりお願いしようと思っている」

──仙台市や茨城県などがパンダ誘致を進めている

「私は白浜町長である間はパンダがいない現実を現実として捉えていく。石破茂政権にもパンダを戻してもらうように協力を求める気は毛頭ない。台湾とこれからどうやっていくか、その部分で力を貸してくれるなら貸してほしいと思います」

聞き手:奥原慎平(産経新聞)

■大江康弘(おおえ・やすひろ)
71歳。自民党和歌山県議を経て、平成13~25年まで民主党などで参院議員を務める。自民党の玉置和郎元総務庁長官の秘書を務めたことで親台湾姿勢の影響を受けたという。国会議員時代は安倍晋三元首相の後を継ぎ、台湾との親善交流強化を目的とした一般社団法人「亜東親善協会」(現・日本台湾親善協会)の会長を務めた。

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