和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」で飼育されるジャイアントパンダ全頭の中国返還が発表された。大江康弘白浜町長が産経新聞のインタビューに応じ、政治的駆け引きに利用されかねないとしてパンダ頼みの観光戦略から脱却を図る考えを示した。
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アドベンチャーワールドのパンダ=令和2年、和歌山県白浜町

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和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド(AW)」で飼育されるジャイアントパンダ全4頭の6月末の中国返還が発表された。国内のパンダは来年2月に返還期限を迎える東京・上野動物園の2頭のみとなる。「パンダ・ロス」に動揺する動きがみられる一方、希少動物のパンダの貸与を巡っては、中国政府が外交カードとして活用してきた側面がある。昨年5月に白浜町長に就任した元参院議員の大江康弘氏は産経新聞のインタビューに応じ、政治的駆け引きに利用されかねないとしてパンダ頼みの観光戦略から脱却を図る考えを示した。

「ポスト・パンダ」の白浜を描く

──昭和63年に2頭がAWに来園して以来31年間パンダは観光客誘致に貢献した

「効果は確かにあった。AWの努力で17頭が誕生し、年間90万人を誘客する実績を作ってきた」

──「パンダ・ロス」が不安視される

「役場は切り替えができつつある。町には白良浜や白浜温泉、三段壁、千畳敷など観光スポットがある。一方、街並みは非日常感やワクワク感が不十分。8月1日に『ポストパンダ1号』として白良浜を模様替えする。どの政治勢力にも左右されない安定した形で誘客できる観光資源を生かしたい」

産経新聞のオンラインインタビューに応じる和歌山県白浜町の大江康弘町長=5月8日午後

「パンダ外交」に不信感も

──AWは4月24日にパンダ返還を発表した。これまで国内に貸与されたパンダは契約期間が延長されるなど柔軟に対応されてきたが、今回の返還はAWと調整したのか

「いや。役場職員の『大変なことになった』との電話で返還のニュースを知った。急ぎ役場に戻ったら記者からコメントを求められたが、まずは経緯を確認しないといけない」

「園長とマネジャーに来てもらうと、10年前に中国側から『更新時期に全頭返還してもらう』ということを言われていたという。今年8月で10年の契約が切れる。ただ、『どこかの時点で中国に戻さなければいけない』と事前にAWから相談があってもよかったが…」

──不透明なベールに包まれたような話だ

「白浜のパンダはAWと中国との直接の契約になっている。AWも中国が相手だから『腫れ物に触る』ように、契約交渉は9割以上が水面下の話だったのだろう。中国への向き合い方としてそうなるのも理解できる」

──ある日突然パンダがいなくなる

「中国はパンダさえ政治的ツールにしているのは否めない。昭和47年に初めてパンダが上野動物園に来て以来、ボールは絶えず中国側にある。われわれはキャッチャーでしかない。どういうボールが飛んでくるか。真ん中に飛んでくれればOKだが、暴投を投げられたら…。その都度大変な思いをしないといけないというのがずっと続いている」

聞き手:奥原慎平(産経新聞)

■大江康弘(おおえ・やすひろ) 
71歳。自民党和歌山県議を経て、平成13~25年まで民主党などで参院議員を務める。自民党の玉置和郎元総務庁長官の秘書を務めたことで親台湾姿勢の影響を受けたという。国会議員時代は安倍晋三元首相の後を継ぎ、台湾との親善交流強化を目的とした一般社団法人「亜東親善協会」(現・日本台湾親善協会)の会長を務めた。

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