JAPAN Forwardの寄稿者たちが各々の分野で新年を展望する恒例の企画「展望2025」がスタート
Predicitions Naito

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新年、明けましておめでとうございます。

JAPAN Forwardの寄稿者たちが各々の分野で新年を展望する恒例の企画「展望2025」をスタートするにあたり、読者の皆様方、そして寄稿者たちにまずは新年のお祝いと感謝を申し上げます。JAPAN Forwardは、今年も日本が世界に希望の光を届けていけるよう祈ります。

誰が戦争を終結できるのか

世界各地で拡大する数々の戦争の流れに誰が歯止めをかけ、終息に向かわせることができるのか―。戦後80年となる今年は、それを占う意味で非常に大切な年になるだろう。各地で悲劇を引き起こしている戦争を収めることができなければ、世界は再び大戦の火の中に進みかねない危険の中にあるからだ。

希望はある。米国で20日、ドナルド・トランプ氏が大統領に就任し、第2次トランプ政権をスタートさせる。

米大統領選で圧勝したトランプ氏(左)とメラニア夫人=2024年11月6日(ロイター)

「米国を再び偉大な国にする」-。そう宣言したトランプ氏については、米国内外に期待とともに、不安や反発の声はある。しかし、先の米大統領選で、激戦州すべてで勝ち、同時に実施された上下両院選でも勝利したトランプ氏率いる米政権に、大きな期待が寄せられていることは間違いない。

問題は、トランプ氏以外に破壊と殺戮、憎悪の連鎖を生む戦争に歯止めをかけ、その終息への道筋をつける力を持つものがいるのか、ということである。

世界を俯瞰すると、欧州連合(EU)を率いるドイツでは、ショルツ首相の連立政権が昨年11月に崩壊したほか、フランスでも内閣が崩壊するなど、欧州政治が不安定化している。14年ぶりに労働党のスターマー首相が誕生した英国は、世界的に指導力を発揮できるかどうかは不透明だ。イタリアは政治的に安定しているが、同じく先行きは読めない。

トランプ氏以外にのぞみなし?

今年のG7議長国、カナダでは、トルドー首相が退陣の危機にある。日本では、先の衆院選で敗北し、少数与党となった石破茂内閣は今夏、今度は参院選が待ち受けている。G7の中で、トランプ氏だけが強い指導力を発揮できる政治的状況にある。

カナダ議会で発言するトルドー首相=2124年9月18日、カナダ・オタワ(©Sean Kilpatrick/The Canadian Press、AP=共同)

ロシアによるウクライナへの侵略戦争は2月に4年目に突入する。ロシアのプーチン大統領は昨年末、戦況がロシアに有利であると強調した。だが、子分の同じ独裁国家、北朝鮮から兵器や兵力まで借り受けて戦争をしているのが実態だ。

ロシアが弱体化したことで、ロシアの軍事的後ろ盾を失ったシリアのアサド政権はあっさりと短期間で崩壊。アサド大統領はさっさとロシアに脱出した。長年、アサド政権を支援してきたイランも、同政権を見限った。

戦争終結には、国内の疲弊と、「天の時」とでも言うべきタイミングが不可欠だ。終戦80年の今年がその時であって欲しいと願っているのは日本だけではない。「ウクライナでの戦争を終わらせる」。そう公言するトランプ氏が、ロシアと同じく核武装した軍事大国、米国の指導者として介入するしか、のぞみはないだろう。

中国による尖閣奪取

日本、そしてアジアにとって重要なのは、中国の動向だ。南シナ海で埋め立てた人工島を軍事基地化し、他国の技術や領土の奪取もいとわない中国は、覇権国家の道を邁進し、米国の地位と安全を脅かすようになった。トランプ氏が「高関税」を武器に、中国に圧力をかけていくことを明言したことで、苦境にある中国経済は今後、さらに厳しい状況に追い込まれるだろう。

中国軍内の汚職は、規模が大きく、抵抗する台湾を中国が武力で屈服させることは実際には難しいとの見方も出ている。問題は、台湾統一が困難な場合、2027年に任期を迎える習近平国家主席が権力を維持するためにどんな方法をとるのか、である。

昨秋、台北を訪問し、日台の安全保障問題の専門家たちと意見交換した際、誰も中台双方に大流血を強いる台湾有事が起こるとは見ていなかったのには驚いた。一方で、中国による尖閣諸島(沖縄県石垣市)奪取の方がより現実味がある、という話が出た。

実際、中国は年々、日本領海、領空を含む尖閣周辺への侵入の度合いを高めながら徐々に支配権を獲得する戦術をとっている。尖閣周辺の現場では、すでに「大変厳しい状況にある」(海上保安庁)。

尖閣諸島の魚釣島沖で中国海警船(中央奥)をぴったりとマークする海上保安庁の巡視船(手前2隻)=2024年4月27日午前、沖縄県石垣市(大竹直樹撮影)

習近平政権にとっては、▽ヤギしかいない無人島(尖閣諸島)に上陸し奪取するのは台湾進攻よりも武力衝突のリスクが低い▽日本が抵抗すれば、愛国勢力に「中国の領土防衛」を強く訴え一致団結を呼びかけて政権批判を封じ込めることもできる▽尖閣周辺の豊富な漁業資源に加えて石油・天然ガスなどの地下資源活用の夢を語ることで生き残りを図るカードにできる―という。

日本は覚醒するのか

「尖閣有事」となれば、日米など先進諸国による対中国経済制裁が取られるだろう。問題は、核武装する中国が尖閣諸島を奪取した後、日本は尖閣奪還のため、中国と戦争状態に入る決断をできるのか、ということだ。日本のメディアも、国会でも、この議論をほとんど取り上げていない。

石破茂首相は、まずは今月、トランプ氏と会談し、議論を深めて、「尖閣有事」への備えを速やかに始めるべきである。いま目の前にある危機への対処について、石破首相は自ら国民、そして世界に語らなければならない。平和構築には軍事力が必要だ。日本が戦後80年近くタブー視して封印してきた核武装についても議論せざるを得ない世界情勢を説明せよ。日本は戦後と決別し、新しい日本に脱皮し、覚醒するときが来ている。

日本人の多くは、闇に包まれた世界にあって日本が平和を尊び、希望と安定をもたらす国であると信じ、それを強く願っている。JAPAN Forwardは、日本が尖閣有事にむけて何を考え、どう準備しているのか、様々な角度から伝えていきたい。

筆者:内藤泰朗(JAPAN Forward編集長)

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