
東京地裁の解散命令決定を受け、記者会見する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長(左)=東京都渋谷区の教団本部
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東京地裁は宗教法人法に基づき世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に解散を命じた。文部科学省の解散命令請求を受けたもので、献金被害が甚大で看過できず、「法人格を失わせるほかに適当かつ有効な手段は想定し難い」と判断した。
命令が確定すると教団は宗教法人格を失い、税制上の優遇措置が受けられなくなる。教団の財産整理は裁判所が選任した清算人が行う。ただ教団側は「信仰の自由の妨げは人権侵害」などと反発しており、決定を不服として東京高裁へ抗告し、最高裁まで争えば、決着が長期化する可能性もある。
だが憲法が保障する「信教の自由」は「公共の福祉に反しない限り」の範囲内にある。
高額の献金トラブルを多発させてきた教団こそ、信者やその家族に対する人権侵害を繰り返してきたのであり、迅速な決着が望ましい。

命令の確定までに、教団側が財産を海外や別法人に移す可能性も指摘されている。教団の財産は本来、被害者の救済に充てられるべきものだ。教団財産の把握や流出防止には、令和5年に成立した教団被害救済法に基づく徹底監視が必要である。
また解散命令はあくまで法人格を剝奪するもので、任意団体としての宗教活動は存続でき、信者の勧誘や献金を募ることもできる。法人格を失うことで所轄官庁への財産管理などの報告義務もなくなる。
教団の動向については、解散命令の確定後も監視を緩めるわけにはいかない。
昭和50年代から平成初頭にかけて、旧統一教会による「霊感商法」や「合同結婚式」が大きな社会問題となり、平成27年の名称変更後も、献金などを巡るトラブルは続いていた。
これらの背景には、日本人は敗戦までの36年間統治してきた韓国への贖罪(しょくざい)のため徹底的に貢がなくてはならないという、教祖・文鮮明総裁の教えがあったとされる。いわば、教団のルーツは反日団体である。
そうした教団を、ここまで放置してきたことには、国の責任も大きい。東京地裁は、教団による献金被害は、少なくとも1500人超に約204億円生じたと認定した。被害者の救済が滞りなく進むよう、教団の財産保全などには国が一定の責任を負うべきである。
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2025年3月26日付産経新聞【主張】を転載しています
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