
米ユタ州オレムのユタバレー大で、銃撃されたイベントで話すチャーリー・カーク氏=9月10日(Tess Crowley/The Deseret News提供、AP=共同)
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主張や政治的立場のいかんを問わず、暴力は民主主義の最大の敵である。卑劣なテロリズムは社会から排除しなくてはならない。
米西部ユタ州のユタバレー大で、トランプ大統領に近い保守系の政治活動家、チャーリー・カーク氏が講演中に銃撃され、死亡した。
カーク氏は保守派若年層のオピニオンリーダーとして、昨年の大統領選ではトランプ氏の勝利に貢献したとされる。9月7日には東京都内で、参政党のイベントに参加していた。
狙撃は遠距離からのもので、カーク氏は首付近を撃たれた。銃撃技能の高度な熟練者による犯行とみられる。
連邦捜査局(FBI)など捜査当局は、卑劣なテロの全容解明を急いでほしい。
トランプ氏は動画による声明を発表し、「過激な左派による政治的暴力があまりにも多くの命を奪ってきた」「過激な左派はカーク氏のような素晴らしい米国人をナチスなどと同一視してきた」などと述べた。

だがこれは犯行の背景が判明する前の声明である。トランプ氏自身も昨年7月、大統領選の選挙集会での演説中に狙撃の標的となっており、テロへの怒りは当然としても、まず対立をあおる前に事態の沈静化と政治活動の安全を図るべきだろう。
トランプ氏は、国土安全保障長官宛ての書簡で、大統領選を争ったハリス前副大統領の警護を9月1日付で打ち切るよう指示したとされる。ロサンゼルス市のバス市長は「多くの政治的報復に続く新たな復讐(ふくしゅう)だ」と批判していた。
政敵の安全を保障することも大統領の責務である。警護打ち切りが事実なら、これを撤回すべきである。悲しいかな、テロは連鎖する。新たな犯行は未然に防がなくてはならない。


それは国内でも同様である。令和4年の参院選で、街頭演説中の安倍晋三元首相がテロリストの凶弾に倒れた記憶も新しい。5年には衆院補選の選挙演説中に、当時の岸田文雄首相にパイプ爆弾が投げ込まれるテロ事件も発生した。
近く、自民党の総裁選が実施される。警備当局は両事件の重い反省の上に立ち、万全の体制で候補者らを守らなくてはならない。暴力によって政治や社会が左右される事態は、もうたくさんである。

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2025年9月12日付産経新聞【主張】を転載しています
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