
自民党総裁選の決選投票に勝利し、新総裁に選出された高市早苗前経済安全保障担当相 =10月4日午後、党本部(春名中撮影)
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自民党総裁選で、高市早苗前経済安全保障担当相が小泉進次郎農林水産相を決選投票で破り、新総裁に選ばれた。
10月中旬に召集予定の臨時国会で、石破茂首相(前自民総裁)に代わる首相を指名する選挙が行われる。野党側に候補者一本化の機運はなく、高市氏が指名される見通しだ。宮中での親任式を経て、憲政史上初の女性首相が誕生する。
自民は比較第一党だが、衆参両院で与党過半数割れの中での厳しい船出となる。
女性首相誕生期待する
高市氏は総裁当選後、「嬉(うれ)しいというよりも、これからが本当に大変だ。スピーディーに実行しなければいけないこと(政策)がたくさんある」「(党所属国会議員の)人数も少ない。全員に馬車馬のように働いてもらう」と語った。
高市氏や自民の議員は、国家国民のため全身全霊を尽くして働いてもらいたい。

高市氏は、総裁選1回目投票の党員・党友票で2位以下に相当な差をつけた。決選投票では国会議員票、都道府県連票の双方で小泉氏を上回った。
高市氏の政策や保守の信条を評価する党員・党友の支持を国会議員が尊重した結果だろう。要職の人事は適材適所だが、総裁選候補を含め挙党体制を整えることが肝要である。
最優先の課題は日本の政治に安定を取り戻すことだ。それなしに、外交安全保障や物価高対策、経済成長、人口減少などへの対策を強力に推し進めることは難しい。
連立を組む公明党との協力に加え、野党との関係構築が急がれる。高市氏は連立政権の枠組み拡大に前向きだ。野党各党に党首会談を呼びかけ、連携していく党を見いだしてほしい。
昨年の衆院選、今年の東京都議選、参院選で立て続けに大敗した自民は、結党以来の危機的状況にある。石破首相や党執行部の拙(つたな)い政権運営を目の当たりにした保守層や若年層が自民支持から急速に離れた。これが参院選での国民民主党や参政党の躍進につながった。
自民の党勢回復には新しいリーダーのもとで党を立て直すしかなかった。保守層の支持を集める高市氏の総裁就任は、党員、支持層のさらなる離反を防ぎ、党勢回復のスタートラインに立つことを意味する。ただし、それは容易な道でない。
日本は内外で危機に直面している。自民の議員は団結して危機克服の歩みをはじめなければ政権から転落する可能性が依然残っていると知るべきだ。
そのためには、諸政策を強力に推し進める必要がある。
日本の独立と繁栄の基盤は安全保障だ。反日的で核武装した専制国家の中国、ロシア、北朝鮮は連携を深め、力による現状変更を狙っている。台湾有事の懸念は高まっている。
安倍晋三政権の安保関連法の制定や岸田文雄政権の防衛力の抜本的強化の流れを発展させ、平和を守る抑止力、対処力を充実させねばならない。
保守政党の原点に返れ
政府は、令和9年度に、防衛費と関連経費を合わせ国内総生産(GDP)比2%を確保する方針だ。高市氏はこの水準のままでは日本を守れないとの考えを示してきた。この認識は妥当だ。厳しい財政状況だが、防衛力の整備は確実に進めたい。
日米両政府は10月下旬のトランプ米大統領の来日を調整している。高市氏はトランプ氏との信頼関係を構築し、対中認識をすり合わせてほしい。関税問題をはじめ経済関係でも日本の国益と緊密な同盟関係を守ってもらいたい。
北朝鮮に拉致された日本人被害者全員の救出は極めて重要である。
高市氏は総裁会見で「物価高対策に力を注ぎたい」と語った。与野党は物価高対策をめぐりガソリン税の暫定税率廃止で合意している。それに加え、将来を見据えた成長戦略を実行に移してほしい。人口減少を踏まえた医療や介護などの社会保障制度改革も待ったなしだ。
自民は保守政党の原点に返らなければならない。
安定的な皇位継承策の実現は国の根幹にかかわる。皇統の最重要原則である男系継承を守る政府報告書の内容実現へ、自民総裁としてリーダーシップをとってもらいたい。
参院選の争点となった外国人政策や、石破政権下で停滞した憲法改正への取り組みも進めていきたい。
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2025年10月5日付産経新聞【主張】を転載しています
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