9月1日に改正鳥獣保護管理法が施行される。人間の生活圏に出没したクマに対し、市町村長の判断でハンターによる「緊急銃猟」が可能になる。
Bears over temple landscape format

寺の敷地に入り込んだクマ=盛岡市

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9月1日に改正鳥獣保護管理法が施行される。人間の生活圏に出没したクマに対し、市町村長の判断でハンターによる「緊急銃猟」が可能になる。住宅街や畑などで相次ぐ被害に対し、迅速に危険を防ぐ布石となろう。

今年も被害は多い。7月には岩手県で在宅中の女性がツキノワグマに、北海道では新聞配達中の男性がヒグマに命を奪われた。

北海道の知床国立公園内の路上に現れたヒグマ=2018年6月(北海道羅臼町提供)

以前は山菜採りなどで山に入った際の遭遇が多かったが、近年は、市街地に出現するため「アーバンベア」と呼ばれるクマの被害が増えた。

従来、アーバンベアへの対応は明確に差し迫った危険がある場合に限り警察官がハンターに発砲を命じるものだった。これでは後手に回りやすい。法改正により、市町村長の迅速な判断で駆除できる意義は大きい。

ただし、生活圏での発砲である。誤射や跳弾での人身事故には十分すぎるほどの注意が必要だ。環境省は新制度での安全確保の方法などを説明した指針を作成しており、内容と手順を徹底しなければならない。建物内や河川敷などでリハーサルを行い、住民に的確に情報を周知する手段も確立すべきである。

知床国立公園内の道路を歩くヒグマの親子=5月、北海道斜里町

戦後の農地拡大で野生動物は奥山に追われた。だが今は過疎化や農林業衰退で状況は変わった。銃によるクマの駆除はやむを得ぬ手段と位置づけたい。

今秋はブナの実が大凶作の見通しだ。冬眠前に空腹となったクマの市街地出現が増える恐れがある。人命の最優先は当然であり、安全な銃猟への周到な準備が急がれる。

寺の敷地に入り込んだクマ=盛岡市
おりに捕獲されたクマ=6月、豊岡市内

同時に求められるのが、自然との共存の道を探る努力だ。クマとの遭遇を減らすには人間の生活圏に踏み込ませないことが肝要だ。里山の未利用果樹の撤去や市街地への侵入経路となる河川敷の茂みの整理、人家のゴミ管理が不可欠である。

被害が相次ぎ急を要する足元のクマ対策はもちろん、今の猟銃と法制で実施するほかない。ただし、昨今はドローン(無人機)やAI(人工知能)などの技術進歩が著しく、多くの分野でその活用が進んでいる。

クマ対策でも最新技術を取り入れれば、市街地での誤射、跳弾の恐れを局限する駆除手法も開発できるはずだ。環境省が音頭をとり、自治体、警察、企業で対策チームを設け、早期開発と法改正に当たってほしい。

2025年8月28日付産経新聞【主張】を転載しています

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