インドで予定されている日米豪印の協力枠組み「クアッド」の首脳会合が見送られる可能性があるとインドのメディアが報じた。米印関係の冷却化が最大の原因とみられるが、中国を抑止するため、クアッドを支える米印関係を後退させてはならない。
Marco Rubio Quad in Washington

米ワシントンでの「クアッド」の会合前に記者会見するルビオ国務長官(手前)と岩屋外相(右端)ら(AP=共同)

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インドで11月にも予定されている日米豪印の協力枠組み「クアッド」の首脳会合が見送られる可能性があるとインドのメディアが報じた。

米印関係の冷却化が最大の原因との見方が支配的だ。参加国の国内問題や貿易に関する立場の相違も見送りの理由に挙げられている。

トランプ米大統領は首脳会合に出席しない意向を示したという。クアッドの連携にひびが入って喜ぶのは、インド太平洋地域で軍事的影響力を拡大しようとしている中国である。

中国を抑止するため、クアッドを支える米印関係を後退させてはならない。トランプ氏とインドのモディ首相は、関係改善に乗り出してほしい。

米ホワイトハウスで共同記者会見に臨むインドのモディ首相(左)とトランプ米大統領=2月13日(ロイター)

トランプ政権は、インドがウクライナ侵略を続けるロシアから割安で原油を大量購入していることを非難しインドに50%の制裁的関税を課した。インドは猛反発した。

また、今年5月のインドとパキスタンの軍事衝突についてトランプ氏が「私が解決した」と吹聴し、パキスタン軍のトップをホワイトハウスに招いたこともインド側の感情を逆なでした。パキスタンとの問題で、第三者が介入する余地はないというのがインドの歴代政権の立場だからだ。

「戦略的自律外交」を掲げるインドは、東西冷戦期も米ソのいずれにもくみしない非同盟路線をとってきた。

そのインドがクアッドに参加したのは、自国との国境問題を抱える「中国の脅威に対処する」という共通の利害を重視したためだ。 

インドのモディ首相(左)と中国の習近平国家主席=8月31日、中国・天津(インド首相府提供、AP=共同)

しかし、米国との冷却化を見据え、インドは中国を刺激しない姿勢に転じ始めたと指摘されている。モディ氏は8月、上海協力機構首脳会議出席のため、7年ぶりに訪中した。

習近平国家主席との首脳会談でモディ氏は、米国の高関税政策を念頭に「世界経済の不確実性に直面する中、インドと中国は協力を強化することが重要だ」と中国との関係改善に前向きな考えを示したという。

インドをクアッドにひきつけておかねばならない。

日本の次期首相はクアッドのもう一カ国のメンバーであるオーストラリアとも協力し、モディ氏とトランプ氏の会談実現など仲介努力を進めてほしい。

宮城県に向かう東北新幹線の運転席で、インドのモディ首相(右)と写真に納まる石破首相=8月30日(内閣広報室提供)

2025年10月12日付産経新聞【主張】を転載しています

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