
ホストクラブの看板が立ち並ぶ、東京・新宿の歌舞伎町
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悪質なホストクラブを規制する改正風俗営業法が成立した。早ければ月内にも公布され、6月下旬から施行される。
女性客に多額の借金を背負わせて売春などを強要するような非道を許してはならない。警察はじめ関係機関は法律を厳格適用し、悪質ホストを根絶してもらいたい。
悪質ホストを巡っては、客に恋愛感情を抱かせて高額なシャンパンなどを次々に注文させ、売掛金(ツケ)により借金漬けにする行為が社会問題化していた。また、客を性風俗店勤務などに紹介したホストやスカウトが紹介料を受け取る「スカウトバック」が横行し、被害拡大に拍車をかけていた。
改正風営法は、こうした行為を禁じるものだ。「恋愛感情その他の好意の感情」につけ込んだ飲食の要求などを「してはならない」と明記し、営業停止など行政処分の対象とする。

代金支払いで客を威迫し、売春や性風俗店勤務、アダルトビデオ出演などを求める行為はより重い刑事処分の対象とした。6月以下の拘禁刑や100万円以下の罰金を科し、スカウトバックも禁止した。無許可営業も厳罰化し、店側への罰金を最大3億円に引き上げた。
警察庁によると、令和6年に売春防止法違反や強要などで摘発されたホストや関係者は計207人で、前年より121人も増えた。ホストクラブの多い東京・歌舞伎町では経営者らが6年4月に業界団体を設立したほか、売掛金の廃止などの自主ルールを設けたが、改善していないのが実情だ。
スカウトバックの横行には「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の関与も指摘されている。今回の風営法の改正により、規制を強化したのは妥当である。

問題は、実効性をどう持たせるかだろう。禁止される「恋愛感情に乗じた行為」が何を指すのかの線引きは難しい。「来店しないと君との関係が終わる」「別れたくないなら飲んでほしい」などの言動が該当すると、取り締まり対象の指針を具体的に示して周知すべきだ。
改正風営法は男性客相手のキャバクラなどにも適用される。施行後は店への立ち入り捜査なども積極的に行うなど取り締まりを強化し、卑劣なビジネスを一掃してほしい。
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2025年5月23日付産経新聞【主張】を転載しています
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