新潟県佐渡島の生き物を紹介する映像記者、大山文兄のフォトエッセイの第24回目は、ヒトと馴染み深いツバメのヒナの姿をお届けします。
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口を大きくあけてエサをねだるヒナ(大山文兄撮影)

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春に日本に渡って来るため春のイメージのツバメだが実は、春から秋にかけてずっと見ることができる。今回は国の特別天然記念物のトキではなく、人家の軒下などヒトのいるところに巣作りして、ヒトと縁が深いツバメに焦点をあてた。

ホバリングをしてヒナにエサを与える瞬間(大山文兄撮影)

スズメではなくツバメの学校

チュピチュピチュ

早朝からツバメのヒナが5羽、自宅納屋にかかる電線に等間隔に止まり、にぎやかに合唱している。エサを自力でとることがまだ苦手なヒナに親がエサを与える。

エサを与える瞬間(大山文兄撮影)

ツバメは一夫一婦で父母とも協力してヒナを育てる。この時も両親が飛び回り、自分が捕まえた虫をヒナの口に押し込んでいた。目にも止まらない速さだ。

エサを与える瞬間(大山文兄撮影)

面白いのは、一羽に与えると、次は隣と順番にエサを与えることだ。いくらヒナが大きな声でアピールしても続けてエサをもらえることはない。

人と仲良しのツバメ

ツバメは3月ごろ、フィリピンやタイなど東南アジアから日本に渡り、人家や店の軒下などヒトと近い場所に巣を作る。卵を毎日1個ずつ、合計3~7個産み、つがいで子どもを育てる。秋になると、子どもと一緒にまた暖かい地へと旅立つ。カラスなどに襲われることもあり、1年に2回から3回、子どもを生む。

巣の素材は田んぼの泥や枯草だ。口に泥を含んで持ち帰り、壁や台の上にレンガのように積んでいく。

ツバメのエサはトンボ、チョウ、ハエ、カ、バッタなどの昆虫だ。スズメと違ってコメを食べないため益鳥として大事にされてきた。日本では、ツバメが巣をかける家は縁起がよいと信じられ、壁を汚したり、巣の下にフンを落としてやっかいであっても追い出さずに愛でてきた。

仲良く並んでエサを待つツバメのヒナ(大山文兄撮影)

ツバメの数は里山の自然や農耕地の現象で全国的に減少している。日本野鳥の会によると、環境省、大阪府、石川県で行った生き物調査のどれもツバメの繁殖が少なくなっているという。

日本野鳥の会佐渡支部長、土屋正起(まさおき)さんは「佐渡でツバメ調査を行ってはないが、少なくなっているのは事実だ。かつてツバメの巣があった商店街もシャッター街になり、島内も空き家が増えた。ツバメが人と暮らすのはヘビやカラスなど天敵から守ってもらえるためだが、そのヒトが少なくなるとツバメも巣作りをしなくなってしまう」と話す。

我が家が避けられた理由

佐渡に移住して最初の春、ツバメが我が家にやって来た。家を物色するかのように飛び回った後、なんと台所のライトの上に巣作りをしようと巣材の泥を運んできた。さすがに、台所で巣作りされるとフンやエサの虫が運びこまれ不衛生なため、台所からはお引き取り願った。

その後、保護猫を3匹引き取った。だからなのだろうか。我が家にツバメは巣作りに来なくなった。玄関や軒下ならウエルカムだったので残念に思っていた。ところが、なぜか隣りで巣を作ったツバメが巣立ち後の数日間、我が家の納屋の電線に並ぶようになった。その間は、朝から相当の音量のヒナの合唱が響きわたる。数日経つと自分でエサをとるようになったのかいなくなり、静寂が戻る。

不思議なのは隣家もネコを1匹飼っているのにツバメが巣を作ることだ。ネコの数の問題なのか、それはツバメに聞かないとわからない。

来日した外国人が、日本人がフンなどで壁を汚すツバメの巣を壊さないことに驚くと聞く。ツバメの巣は日本人の自然と動物の共生のシンボルなのかもしれない。

筆者:大山文兄(フォトジャーナリスト)

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大山文兄(おおやま・ふみえ)産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください。

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