道路や下水道を管理する国や全ての自治体は、わがことと捉えて対策を急がなければならない。
Saitama Sinkhole

県道が陥没しトラックが転落した事故現場=埼玉県八潮市

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道路や下水道を管理する国や全ての自治体は、わがことと捉えて対策を急がなければならない。

埼玉県八潮市で県道が陥没し、走行中のトラックが転落した事故は、今も救助や復旧の見通しが立たない状況が続いている。

事故は1月28日に発生した。交差点で道路が突然、陥没して大きな穴が開いた。地下の下水道管が腐食し、そこから土砂が流れ込み、道路の下に空洞が生じて陥没したとみられる。

転落したトラックの運転席らしきものが下流の下水道管内で見つかったが、運転していた男性の行方は分かっていない。大変痛ましい事故だ。二次災害の恐れがある中、捜索は難航しており、長期化する可能性がある。周辺住民は避難や節水で不便な生活が続いている。

県道が陥没しトラックが転落した事故現場=2月6日午前、埼玉県八潮市

この下水道管は使用開始から42年が経過していた。5年ごとに点検が行われ、令和3年度の点検では一部に腐食が見られたが、すぐに補修が必要な状況ではないと判断されていた。

下水道管の老朽化を背景とする道路の陥没は各地で相次いでいる。県は事故原因を調べる第三者委員会で老朽化との因果関係や施工、管理のあり方などを調査する。点検が適切だったか検証する必要もある。原因究明と対策の徹底を求めたい。

国土交通省は今回と同様の大型下水道管を管理する7都府県に緊急点検を要請した。他の下水道管を含め全国での総点検も実施すべきだろう。

高度経済成長期に大量に造られたインフラの老朽化は日本全体の深刻な課題だ。多くの施設が一般に建造から50年の耐用年数を迎え、破損や崩落などの事故がたびたび起きている。

道路陥没事故の現場周辺=2月10日、埼玉県八潮市

耐用年数を過ぎた下水道管の割合は4年度末で全国で約7%だが、その20年後には40%に急増する見込みだ。道路や橋、トンネルなども同様の事態に直面している。

自治体は膨大な点検や補修を迫られているが、財政難や人員不足で思うように進んでいない。ドローンや人工知能(AI)の活用は進んでいるが、さらに効率的な点検方法の開発を官民で急ぐべきだ。

社会や経済を支えるインフラは国の根幹である。本格的な老朽化時代を迎え、政府は自治体の支援や技術開発の戦略を加速させる必要がある。

2025年2月8日付産経新聞【主張】を転載しています

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