
セブン―イレブン店舗の看板=米ニューヨーク(共同)
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セブン&アイ・ホールディングスに対して買収を提案していたカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールが提案を撤回した。
クシュタールは「建設的な協議の欠如」を撤回の理由に挙げ、セブン経営陣の対応を批判したが、敵対的買収に乗り出す可能性は否定している。
セブンは単独路線を進めることになるが、セブン株はクシュタールが買収提案を撤回する前日の株価を上回ることができていない。市場が単独での成長を懐疑的にみている表れともいえる。セブンは説得力ある価値向上策を示す必要がある。

クシュタールによる買収提案が明らかになったのは昨年8月だった。買収金額はその後、7兆円規模に引き上げられた。円安もあって海外企業は日本企業に対する買収意欲を強めているとされ、その象徴的な事例となった。
セブンに対する買収提案は撤回されたが、日本企業の経営者は状況は変わっていないと認識すべきだ。成長余力があるにもかかわらず、企業価値を向上できていない企業は買収されるリスクがあるとの危機感を持って経営にあたってほしい。
買われる側にならないためには構造改革を進め市場評価を高める必要がある。取引先との関係強化を目的に株を保有し合う「株式の持ち合い」解消が進んでいる中では、収益力を高め株価を引き上げることが最大の「買収防衛策」であることを改めて銘記したい。

物言う株主(アクティビスト)の存在感が高まり、日本企業の間には株価引き上げを目的とした自社株買いなど、株主への利益還元を強化する動きが広がっている。だが、株主還元によってつくられた株価が長続きする保証はない。必要以上の株主還元は成長資金の外部流出にもつながる。
本来、株価を上げるには研究開発や設備投資、M&A(企業の合併・買収)などで「稼ぐ力」を高めることが欠かせない。持続的な成長のためには賃上げで社員に報いることや、サプライチェーン(供給網)を構成する取引先との間で上昇したコストを取引価格に適正に転嫁することも必要になろう。
問われているのは、中長期にわたって企業価値向上につながる成長戦略である。
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2025年7月26日付産経新聞【主張】を転載しています
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