
韓国・高陽で開かれた与党「国民の力」の党大会で大統領選候補に選出され、演説する金文洙前雇用労働相(共同)
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韓国の尹錫悦前大統領罷免を受けて6月3日に投開票される同国大統領選まで1カ月を切り、主な候補が出そろった。
内政上の混乱をどう立て直すかが重視されよう。また、韓国の外交防衛政策は日本を含む北東アジアの平和と安定に影響する。安全保障を巡る真摯(しんし)な論戦を期待したい。
保守系与党「国民の力」は5月3日、金文洙前雇用労働相を公認候補に選出した。大統領権限代行を務めていた韓悳洙前首相も出馬を表明し、候補一本化の動きが注目される。支持率でリードしてきた革新系最大野党「共に民主党」の候補、李在明前代表に対抗するためだ。
韓国最高裁は1日、公選法違反事件で李氏を無罪とした高裁判決を差し戻した。最高裁が有罪相当と判断したことで、有権者の中道層が李氏から離れるのではないかとの見方もある。

注意すべきは、韓国の内政が揺れる一方で、韓国を取り巻く安保環境が危機的に悪化しているという現実だ。
ロシアと北朝鮮は昨年、包括的戦略パートナーシップ条約を結んだ。ウクライナを侵略するロシアへの北朝鮮の援兵派遣はこの条約に基づく。条約は一方が有事の際はあらゆる軍事支援を互いに提供すると定めている。朝鮮半島有事の際は、ロシアが参戦する恐れが高まったということだ。
北朝鮮による韓国攻撃と中国による台湾侵攻が同時に発生する可能性も指摘されている。
李氏は「台湾海峡がどうなってもわれわれには何の関係もない」「台湾有事に韓国は関与すべきでない」と述べてきた。中国による台湾侵攻を抑止するには、日米韓と台湾が協力することが望ましい。
李氏は日本を「軍事敵性国家」と呼んだり、「米軍は(朝鮮半島から)撤収すべきだ」と発言したりもしてきた。
反日的であったり、北東アジアの厳しい安保環境を度外視したりした李氏の過去の発言には不安を覚える。日韓や日米韓の結束が弱まって喜ぶのは中朝露の専制国家だ。
金氏も韓氏も、尹氏との距離に腐心するが、尹氏の政策の何もかもが否定されるのは望ましくない。尹氏が進めた日米との安保協力は、戒厳令宣布事件とは関係ない。日米韓連携の重要性を堂々と訴えてほしい。
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2025年5月6日付産経新聞【主張】を転載しています
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