台湾とフィリピンで、中国によるスパイ活動が相次いで摘発された。
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中国と台湾の旗(ロイター)

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台湾で「最高位の中国スパイ」摘発 中国侵攻に合わせて政府転覆を計画

台湾で、中国と呼応して台湾政府の転覆を計画したとして、相次いで退役将校が摘発された。1月20日には台湾北部の防衛を担う陸軍第6軍団を率いた元副指揮官の退役中将が国家安全法違反罪で起訴され、「中国のスパイとしては最高位の将校」(台湾メディア)と注目を集めた。国家安全にかかわる事件の8割超は退役した軍人や警察官が関与しているとされ、頼清徳政権は中国の浸透工作への対応が急務となっている。

検察当局によると、退役中将の高安国被告ら6人は2018~24年、中国に渡航して中国軍の諜報機関関係者と接触。その指示や資金援助を受けて台湾に武装組織を立ち上げ、中国による台湾侵攻の際に武装蜂起することを計画したとされる。主犯の高被告については懲役10年以上の判決を求める意見が付けられた。

台湾紙の自由時報によると、高被告は台湾の官公庁への攻撃のほか、政府要人や軍、警察関係者の殺害、軍事拠点の破壊などを具体的に計画。6人は中国側から計962万台湾元(約4600万円)を受けとっていたという。

台湾では中国の侵攻に合わせた武装蜂起計画が相次いで発覚している。1月には、台湾陸軍を佐官級で退役した元軍人ら7人が中国側の資金提供を受けて武装組織の育成を図ったなどとして、昨年8月に起訴されたことも判明した。

このグループは「中国人民解放軍の10万人を台湾に引き入れる」ことを画策していたほか、秘密裏に台湾独立派の人物を殺害する「狙撃隊」を結成していたとされる。

台湾の対中政策を主管する大陸委員会の報道官は1月23日の記者会見で、2つの事件について「非常に似ている。中国共産党は計画的かつ組織的にこうした(武装)勢力を育成している」と警戒感をあらわにした。国家安全に関わる事件の85%以上は退役した軍人や警察官が関与していることも明らかにした。

台湾の国家安全局が12日に発表した報告書によると、24年に中国によるスパイ事件に関わったとして起訴されたのは64人で、22年の10人から大幅に増加。このうち現役・退役軍人は計43人で7割弱を占める。

筆者:西見由章(産経新聞台北支局)

フィリピンでは中国人スパイ連続逮捕 軍事拠点をドローン撮影

フィリピンで中国人による国防情報を狙った大規模なスパイ犯罪が明らかになった。逮捕された男らはドローンを使い、米軍や比軍の拠点の情報を収集しており、撮影した画像をリアルタイムで本国に報告していた可能性がある。スパイは現地女性との結婚や身分を偽装するなどしてフィリピンに滞在。「スリーパーエージェント」(潜伏工作員)が跋扈(ばっこ)している実態に衝撃が走っている。

比国家捜査局は1月20日、スパイ容疑で、中国人の鄧元慶容疑者(39)と比国籍の男2人の計3人を逮捕したと発表した。

フィリピン国家捜査局が、違法な情報収集活動を行ったとしてスパイ容疑で逮捕した中国人の鄧元慶容疑者ら(1月20日の同局のフェイスブック投稿から)

昨年12月~今年1月、通信機器を設置した車を走行させて情報収集活動を行ったとしている。比軍本部がある首都マニラの「キャンプ・アギナルド」など、重要施設を撮影していた。

さらに30日には別の中国人5人の逮捕を発表。2023~24年にかけ、西部パラワン島の比軍や沿岸警備隊の拠点を高解像度カメラやドローン(無人機)で撮影したなどとしている。中比が領有権を争う南沙(スプラトリー)諸島に近い同島は、比軍司令部や米軍が使う滑走路がある軍事上の要衝。米比両軍の動きを監視していた疑いがある。

捜査当局に衝撃を与えたのは、両グループから押収された〝スパイ道具〟だ。通信機器は海外から遠隔操作できる機能を備えており、撮影された映像が場所は不明ながらリアルタイムで「遠隔地」に送信されていたことが確認された。中国にデータを送信していた可能性がある。

夜間でも監視可能な「軍用級」のカメラも見つかった。

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筆者:桑村朋(産経新聞)

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