環境省は、発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)を巡り、水道事業者に水質検査と基準値を超えた場合の改善を水道法で義務付ける報告書案を有識者会議に示し、了承された。
PFAS Kyoto University

PFASの粉末試薬(原田浩二・京大准教授提供)

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環境省は、発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)を巡り、水道事業者に水質検査と基準値を超えた場合の改善を水道法で義務付ける報告書案を有識者会議に示し、了承された。

報告書案は、内閣府食品安全委員会への諮問などを経て決定する。

水道水を安心して飲める国であり続けるために、不安解消が必要だ。法的根拠を速やかに明確にし、検査と改善が確実に行われるようにしたい。

環境省

PFASは1万種類以上あるとされる有機フッ素化合物の総称で、水質基準値はその代表物質であるPFOAとPFOSの合計で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)とする。これは現在の暫定目標値と同じだ。定期検査は3カ月に1回を基本とする。今は暫定目標値を超えても、改善は努力義務にとどまっている。

浄水場から高濃度のPFASが検出された岡山県吉備中央町では、全国初の公費による血中濃度検査が行われ、8割以上が米国で指針とされる米学術機関が示した基準を上回った。

政府は「知見が不十分」として血中濃度の基準値を定めていない。米学術機関も、超過しても健康に影響を及ぼすものではないとしており、現時点で検査結果に対する科学的な評価は難しい。青木一彦官房副長官は1月28日の会見で、自治体の血液検査への支援は「考えていない」と述べた。

PFASが問題になった背景には、世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関が健康への影響を指摘したことがある。2023年にPFOAを4段階の発がん性評価で最も高い「発がん性がある」に、PFOSを「可能性がある」に分類した。だが、根拠は「限定的」または「不十分」としている。

日本では食品安全委員会がPFASについて「ヒトでの発がん性があると明確に判断するまでの確からしさはない」と評価書にまとめている。

過剰反応は住民の間で混乱を招きかねないため、気を付けたい。ただ、不安を解消していくために、環境省のパイロット調査や各地の環境モニタリングなどについて一層の充実を図り、調査研究を加速させる必要がある。政府や自治体には、的確な情報を分かりやすく国民に伝えることも求められる。

2025年2月12日付産経新聞【主張】を転載しています

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