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長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)で戦時中に強制労働が行われていたなどと、韓国が虚偽情報を広めるきっかけとなったNHK番組「緑なき島」を巡る問題で、大きな進展があった。
NHKが東京簡裁の調停で、番組で使った映像が軍艦島で撮影されたものかどうか確認できていないと、元島民らに認めた。ファクトに基づかない番組を放送したことになる。信じがたい話だ。
元島民らが会見し、「虚偽の汚名を浴びた」としてNHKに検証番組の制作を求めたのは当然だろう。NHKは、映像が反日プロパガンダに悪用された経緯を含め検証し、日本と元島民の名誉を回復すべきだ。
「緑なき島」は昭和30年にNHKが制作した短編映画だ。軍艦島の炭坑内として、ふんどし姿の作業員が狭い坑道をはって進み、人力で石炭を運搬する様子などが映されていた。
NHKは平成22年、映像を韓国メディアに提供した。すると韓国で「地獄の島 軍艦島」などの番組が放送されるようになった。国立の日帝強制動員歴史館でも使われ、朝鮮半島出身者が非人道的な扱いを受けた証拠のように取り上げられた。
一方、元島民らは「端島坑内ではない」としてNHKに抗議し、訂正を求めてきた。NHKは令和3年に調査報告書をまとめたが、「端島炭坑以外であるとの結論に至らなかった」とし、応じなかった。
このため元島民らは調停を申し立て、昨年12月に成立した。その中でNHKは、作業員がヘッドランプを付けていない場面などについて「端島炭坑内で撮影されたものであるという確認が得られていない」と、ようやく認めた。
だが、NHKは調停で「強い遺憾の意」を表明したものの、訂正には応じていない。NHKは本紙の取材に、調停の内容は3年の調査報告書と「何ら変わるものではない」とコメントしたが、矛盾極まれりだ。
軍艦島を含む「明治日本の産業革命遺産」は、平成27年に世界文化遺産に登録された。そのとき韓国側は、強制労働があったとして激しく反対した。
NHKは、自ら制作した不確かな番組がもたらした虚偽情報を払拭する責任がある。国会は、この問題を厳しく追及してもらいたい。
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2025年1月20日付産経新聞【主張】を転載しています
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