
いじめなどさまざまな理由で自殺した子供たちの遺書を展示しているコーナー。肉筆の文字をそのまま紹介しており、複雑な問題を考えさせる=大阪市浪速区、リバティおおさか
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新年度が始まった。新学期が待ち遠しい子供もいれば、憂鬱で仕方がないという子供もいるだろう。
だが、仲間内でいじめなどがあっても、子供同士の意思疎通はSNS中心になり、把握が難しい。
子供のSOSをどう確実にとらえるか。未来ある命をこれ以上、無駄にさせないよう、大人は知恵を絞らなければならない。
厚生労働省によると、令和6年に自殺した小中高生は529人に上り、統計のある昭和55年以降で最多になった。前年に比べて16人の増加である。
10代の死因のトップに自殺が来るのは、先進7カ国(G7)では日本だけだ。憂慮すべき事態であり、政府や学校は深刻さを肝に銘じる必要がある。

統計は警察庁の調べに基づいて厚労省がまとめた。特に深刻なのが女子中学生、女子高校生の自殺の増加だ。新型コロナウイルスの流行が始まった令和2年に急増して以来、増加基調で、6年は284人に上った。5年前から倍増である。
自殺の原因、動機は「学校問題」が最多で、内訳をみると、女子高校生は「学業不振」と「入試以外の進路に関する悩み」が多く、「いじめ以外の学友との不和」が続く。女子中学生では、その「学友との不和」が突出している。
成績不振や孤独に落ち込み、未来が描けないのだろうか。だが、世の中にはさまざまな生き方がある。周囲の大人は、人生の失敗や挫折をどう乗り越えてきたのかを、伝えてほしい。
学校での人間関係や多感な思春期の健康問題には、養護教諭やカウンセラーらの関与も欠かせない。頼りになる大人の聞き役が子供に必要だからだ。
スクールカウンセラーはほとんどの小中高校に配置されているが、在校時間が週4時間に満たない学校も少なくない。
予算や専門職の不足といった課題がある。専門職の育成を急ぎ、配置を増やさなければならない。つらいときはいつでも相談できる安心感を、子供に与えることを優先すべきである。
子供食堂、スポーツや趣味の教室など子供の居場所づくりも重要だ。生活が家と学校との行き来だけになれば、息が詰まることもある。世代を超えた異なる価値観を共有すれば、自信を持つきっかけになるはずだ。
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2025年4月2日付産経新聞【主張】を転載しています
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