南シナ海のスカボロー礁を巡って中国が、領有権を争うフィリピンに対し、「自然保護区」の設置や同礁付近の海空域での威圧を重ねている。中国は直ちに傍若無人な行動をやめるべきだ。
China Coast Guard vessel South China Sea

南シナ海で空撮された中国海警局の巨大船(フィリピン沿岸警備隊提供・共同)

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南シナ海のスカボロー礁を巡って中国が、領有権を争うフィリピンに対し、「自然保護区」の設置や同礁付近の海空域での戦闘機の異常接近、放水砲の使用といった威圧を重ねている。

中国は直ちに「自然保護区」の設置を撤回し、傍若無人な行動をやめるべきだ。

中国は9月10日、スカボロー礁への「国家級自然保護区」新設を発表した。同礁付近の海域では16日、中国海警局船の放水でフィリピン公船の乗組員1人が負傷した。8月には、同礁付近上空で中国軍戦闘機が比側の航空機に異常接近した。比側は強く反発している。

南シナ海・スカボロー礁の周辺海域で、中国海警局の船から放水砲を浴びるフィリピン漁業水産資源局の船(左)=2024年12月(フィリピン政府提供・共同)

そもそも、南シナ海の大半に自国の主権が及ぶとする中国の主張は、2016年の仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の裁定で退けられている。中国にスカボロー礁を支配する権利は少しもない。ハーグの裁定は、スカボロー礁について比側の漁業権を認定している。

だが、中国はこの裁定を「紙くず」と呼んで無視し、強引に南シナ海支配を試みている。国連海洋法条約を基盤とする海の国際秩序への深刻な挑戦だ。

浮遊障壁を撤去するフィリピン当局(フィリピン沿岸警備隊提供・ロイター)

フィリピン・ルソン島の西方200キロに位置するスカボロー礁を中国が軍事利用すれば、地域への脅威となる。

中国は保護区設立で生態系の多様性を守るというが、そのような資格はないと知るべきだ。中国は、スカボロー礁南西に位置する南沙諸島の岩礁を一方的に埋め立てて人工島を造り、軍事拠点にしてきた。中国の埋め立てによってサンゴ礁を広範囲に破壊したことが米シンクタンクの調査で判明している。

南シナ海は日本にとって重要な海上交通路(シーレーン)だ。国際秩序を保ち、南シナ海を自由で開かれた海にしていくため、フィリピンを後押しする必要がある。

遠藤和也駐フィリピン大使が14日、仲裁裁判所の判断に「従う義務がある」とX(旧ツイッター)に投稿したのは当然だ。

自衛隊は米海軍、比海空軍と12、13の両日、南シナ海で合同演習を行った。3カ国の結束を示し中国を牽制(けんせい)するもので歓迎したい。

日本はオーストラリアなどの有志国も加え、フィリピンとの安全保障協力を深めていく必要がある。

2025年9月19日付産経新聞【主張】を転載しています

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