先の大戦中に台湾南方のバシー海峡周辺で戦没した日本人将兵らを悼む慰霊祭が、台湾南端の屛東県恒春にある潮音寺で営まれ、遺族ら約150人が参加した。

台湾南部・屛東県恒春の潮音寺で開かれたバシー海峡戦没者慰霊祭で、福岡資麿厚生労働相の弔辞を代読する日本台湾交流協会台北事務所の片山和之代表=8月3日(西見由章撮影)
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台湾の南に横たわるバシー海峡は、太平洋と南シナ海を結ぶ海上交通の要衝である。先の大戦では南方と行き来する日本の輸送船の多くが、米軍の潜水艦や空母艦載機により沈められた。あまたの将兵や船員が犠牲になっている。
黒潮が台湾南端の恒春半島に運んだ遺体も多い。現地の人々により荼毘(だび)に付され、海を望む地に埋葬されたまま今日を迎えた遺骨は少なくとも数百柱に上るという。日本政府が台湾で収容したのはしかし、昭和50年度の242柱にとどまっている。
恒春半島の一隅にある潮音寺は、元日本兵の中嶋秀次さんが私財を投じ、56年に建てた慰霊のための施設である。自身の乗った輸送船も沈められ、12日間の漂流の末に生還した。その間、波にのまれる仲間がいた。中嶋さんの手を握り、妻の名を呼びながら息絶えた仲間もいる。
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2025年8月1日付産経新聞【産経抄】より
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