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大西洋を航行する不審な石油タンカーがフランス当局に拿捕された。ロシアが制裁逃れに使う「影の船団」の一隻と判明。中国籍の船長が起訴され、来年、司法判断が下される。
Russian Shadow Fleet

「影の船団」の疑いがある石油タンカーに乗船したフランス軍兵士=フランス西部サンナゼール沖(ロイター=共同)

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大西洋を航行する不審な石油タンカーがフランス当局に拿捕(だほ)された。ロシアが制裁逃れに使う「影の船団」の一隻と判明し、中国籍の船長が起訴された。来年2月、司法判断が下される。

露産原油の売却益はウクライナを侵略するロシアの戦費になってきたといわれる。国際社会は影の船団の実態解明を急ぐとともに、不審船の摘発を強化すべきだ。

船はロシアを出港後、バルト海から大西洋を航行し、仏西部ブレスト沖で9月下旬、拿捕された。デンマークで空港閉鎖の騒ぎを引き起こした無人機の発射拠点になっていた疑いもある。欧州の空の攪乱(かくらん)を狙っていたなら由々しき事態だ。

先進7カ国(G7)などは2022年末、ロシアの継戦能力をそぐため、露産原油に1バレル=60ドルの価格上限を設け、これを超える取引に関わる船に保険や海上サービスを提供してはならないとする制裁を導入した。ただ、影の船団による制裁逃れは続き、欧州連合(EU)は今秋、追加制裁案を発表するなど、対策を強化していた。

フランス西部サンナゼール沖で、「影の船団」のタンカー船に乗り込むフランス軍の兵士=10月2日(ロイター)

影の船団は総数800~1千隻に上ると推測される。航行中、船の位置情報を発信する船舶自動識別装置(AIS)の電源を切るなどして当局から逃れるといわれる。影の船団による収益はロシアの戦費調達の30~40%を占めると指摘され、資金を断つことが求められる。

バルト海では昨秋以降、海底ケーブルの損傷が相次ぐ。影の船団の関与も疑われ、欧州各国が警戒を強めている。船は海底に錨(いかり)を下ろし、航行する手法で切断を試みる。ネット通信が切断されれば、金融取引や国家間の情報共有にも甚大な被害が出かねない。

影の船団の摘発には、米国の協力が欠かせない。トランプ政権は8月の米露アラスカ会談を前に、影の船団に制裁を科す案を検討したと報じられた。だが今も、具体的な動きはない。トランプ大統領はロシアに過度に配慮しているのではないか。

国際社会は北朝鮮の動きを注視する必要がある。北朝鮮は国連制裁に反し、海上で積み荷を移し替える「瀬取り」や、船のAISの電源を切って航行するなどの手法で、露産原油の獲得を試みてきたといわれる。日本は近海での監視を一段と強化しなければならない。

2025年10月18日付産経新聞【主張】を転載しています

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