
「東の小山」付近から見たお台場などのビル群=4月12日、東京都江東区(原田成樹撮影)
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3月末、東京湾内にある高さ約40メートルの人工の丘が一般に開放された。東京都内でハイキングを楽しもうとすれば、高尾山(599メートル)や雲取山(2017メートル)がある多摩地区を思い浮かべるが、お台場や国際展示場「東京ビッグサイト」辺りからも眼前に望める都心の山で、ちょっとした山歩きが味わえる。野山をこよなく愛する記者が、新名所「都立海の森公園」を訪れた。
実は以前から、臨海副都心を訪れるたび、緑豊かな森の存在が気になっていた。行き方が分からずたどり着けなかったが、ダンプなどで造成している様子だったので、いずれは踏み入れられる時が来ると思っていた。
晴天に恵まれた4月の休日、お台場方面からバイクで向かった。道路標識に「海の森」の文字は見えないものの方角は分かっている。一目散に向かったが、暁ふ頭公園で水路に阻まれた。しかたなくいったん戻って海底トンネルをくぐると、「海の森水上競技場」の標識が現れ、ほどなく到着。

オープンまもないこともあって駐車場にはスムーズに入れた。駐車料金は休日で1台1千円。バイクは無料でテンションが上がる。
山上へは、木々の間を抜ける階段を上った。子供たちが作ったとみられる巣箱がついている木もたくさんあった。当日はカラスやトビを確認できたが、公園の資料によるとモズやヒバリにも出合えるという。
石原知事時代に構想
一帯は、昭和48年から62年にかけて1230万トンにも及ぶごみと建設発生土などを交互に埋め立ててできた、いわゆる「ごみの山」だった。人類の負の歴史を表土で覆って動植物の楽園とする「海の森公園構想」は、石原慎太郎知事時代の平成17年に策定された。その後、2020東京五輪で総合馬術のクロスカントリー競技も実施された、いわば同五輪のレガシー(遺産)。さまざまな過去を背負って未来へと歩む人類を象徴するような場所だ。
公園部分の広さは約60ヘクタールで、都心では都立代々木公園(約54ヘクタール)、上野恩賜公園(同)などより広い。潮風に強いスダジイ、タブノキ、クロマツ、鳥が集まるオオシマザクラ、ヤブツバキ、ヤマグワなど約50種、約24万本が植樹され、都民や企業との協働で苗木づくりから育ててきた。池や草原なども造られ、生態系を意識していることがわかる。
平成8年の全国植樹祭(都内開催)において在位中の上皇さまと上皇后さまも植樹され、30年の全国育樹祭(同)において皇太子同妃時代の天皇、皇后両陛下がお手入れされている。
園内は、テントやたき火などは禁止されているが、広場ではテーブルやイスを出して、ピクニックをしたり、ボール遊びやたこ揚げをしたりする姿も見られる。人はそれほど多くなく、都心ではなかなか得られない開放感が味わえた。

2つのピーク
「西の小山」「東の小山」と2つのピークがあり、都の海上公園課によると、いずれも造成時に荒川工事基準で42メートル(標高に換算すると約41メートル)あったという。都心にある最も高い自然の山で、国内最初のラジオ本放送が発信された港区の愛宕山(約26メートル)を超えているが、新宿区戸山にある人工の箱根山(約45メートル)よりは低い。
海の森公園は、東京湾の〝独立峰〟とあって、品川方面や新木場方面のほか、遠く房総半島の山々も望めた。
適度なトレイルがあり、総合馬術クロスカントリーのコースとなった斜面も歩いたりジョギングしたりできる。食べ物や飲み物を持参して、一日のんびり過ごすのによさそうだ。
気になるアクセスは自家用車が中心になりそうだが、りんかい線東京テレポート駅から都営バス、JR新木場駅から無料シャトルバスが運行(定員あり)。また、大規模イベントなどの際には船着場も使えるようになっており、海上公園課では「利活用の動向を踏まえて定期便などの可能性を検討していきたい」としている。
筆者:原田成樹(産経新聞)
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