
インタビューに答える小池百合子東京都知事(©JAPAN Forward)
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東京都の小池百合子知事はこのほど、JAPAN Forwardの単独インタビューに応じ、先月訪米した際に東京が国連誘致に意欲がある旨を国連側に直接伝えたと明らかにした。また、世界のトップを目指す国際都市東京が何を目指しているのか、そのグローバルビジョンを語った。話は、災害に強い街づくりから、若者たちによる新たな産業の創出支援や、日本政治における女性活躍の現状とその未来まで実に幅広いテーマに及んだ。
「最高の条件整っている」
小池知事は先月末、ワシントンと姉妹都市のニューヨークを訪問した際、ハドソン研究所とジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院(SAIS)で講演したほか、国際通貨基金(IMF)トップや国連のグテレス事務総長らとも会談し、意見交換した。なかでも注目を集めているのが、東京への国連機関の誘致だ。

国連は各国の拠出金が減少して財政がひっ迫する中、すでに一部機能をケニアのナイロビに移転するなどしている。これについて、「ナイロビも素敵だが、東京はどうかと話したところ、グテレスさんからも東京は世界で最も安全な都市だし、IT(情報技術)の質や人材のレベルなどでも最高の条件を整えているという話があった」という。
小池知事は「もちろんそれは国が決めることだが、東京都はそうした動きがあるのならば、東京こそ国際機関を受け入れることができ、都としてバックアップをすることを国には伝えている」と語った。
災害対策で都市間連携の重要性
また、世界で猛威を振るう自然災害への対応については、東京都は最新の技術を活用しながら地震や台風、洪水、火山の噴火といった数々のリスクへの対策を進めてきたと述べ、地下に雨水を貯める巨大な調整池トンネル網を構築していることや上下水道の耐震化など「東京が世界に誇る都市インフラ」を紹介した。
そのうえで、そうした「東京の強靭化、レジリエンスの技術やマネージメントについて、ジャカルタやクアラルンプール、バンコクといったアジアの都市と密に連携し共有して、都市の安全を図る国際的なネットワーク構築に向けて協力を進めている」と述べ、国家間の枠組みとは別に都市間連携の重要性を強調した。
アジア最大級に育ったスシテック東京
未来を創出する産業のイノベーションについては、今回の訪米時にニューヨーク郊外で視察した、日本人の青年が始めたイチゴ工場についても言及。「イチゴは本当に美味しかった。最初に日本で成功して、その後に世界に出ていくのではなく、初めから世界のマーケットを相手に活動する、そういうスタートアップを応援していきたい」と語った。
東京都は、持続可能な都市をハイテクで実現するという意味の英語の文字からつくった「Sustainable High City Tech Tokyo = SusHi Tech Tokyo」(スシテック東京)という場を創設。日本だけでなくアジアから独創的で発想力あふれる若者、そして投資家を世界から集めて、新たな産業を創出する場にしようと尽力する。

「例えば、AI(人工知能)の発展などで、いま産業が大きく変わってきている。新しい産業やサービスもどんどん生まれてくる。そうした中で、スシテック東京は生まれた。始めて3年が経つが、すでにアジア最大級にまで育っている。その場に世界の都市の市長さんや知事さんを招き、都市間交流の場にもなっている。東京はそうした場で技術やノウハウを共有し、世界のリーダーとしての役割を果たしていく方針だ」。小池知事は意気込みを語った。
リーダーに必要な3つの〝目〟
日本の政治における女性活躍の現状と未来はどうか。先の参議院選挙でも、女性候補者の数は少なかった。ただ、小池氏は「増えてきていると思う。私は東京都知事、山形県知事も女性。市長さんや町長さん、村長さんも合わせれば、女性は増えている。女性首長のネットワークもつくっており、お互いに情報交換をして経済発展につなげる工夫もしている。それを見て、次の世代の女性の皆さんがやってみようという流れになればいいと思う」と指摘した。
最後に、リーダー像について尋ねた。「危機にいかに備えるかが重要だ。東京には1400万人の都民が暮らし、学び、仕事をしている。まずは、都民の命を守り、健康を守り、そして暮らしを守ることが、最大の私の使命だと思っている。世界の都市との競争もある。世界の方々から選ばれる都市にしていきたい。そのためには、3つの〝目〟を持つことが重要だと言っている。時代の変化を見る〝鳥の目〟、そして人々の暮らしを知る〝虫の目〟、それからトレンドを見る〝魚の目〟が必要だ。何を最優先にしなければならないのか、それを明確にして実行していくことだと思う」。小池氏は笑顔で答えた。

著者:ダニエル・マニング(JAPAN Forward記者)
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