HENCAの参加者ら。中央が小池知事(杉浦美香撮影)
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低炭素で製造するグリーン水素の普及を目指し、東京都の小池百合子知事や世界各都市のキーマン、民間セクターの経営者らが集まった国際会議「HENCA Tokyo 2025」が10月21日、開催され、水素の社会実装の重要性を確認、「行動の重要性」を訴えた。
「Action!(行動あるのみ)」
「HENCA Tokyo 2025(水素エネルギー行動会議)」は、「Hydorogen Energy Conference for Action」の略だ。2023年に世界の都市や企業と連携して水素エネルギーの社会実装を加速させることを目的に、東京都の主催で始まった。

冒頭、小池知事は「経験したことがない暑さや災害が世界各地で発生している。気候変動により危機的な状況にあり、脱炭素化の実現は一刻の猶予がない」としたうえで、「エネルギーの安全確保と脱炭素化を実現する切り札が水素だ。行動の変化が未来を変える大きな力になる」と行動の重要性を訴えた。
コップは半分満たされている
続いて、ノイ・バン・フルスト国際水素・燃料電池パートナーシップ(IPHE)副議長が「クリーン水素の世界市場に向けて」と題して基調講演した。

「水素は脱炭素化の側面だけではなく、経済的なチャンスをもたらす。水素の生産で、水素は輸出産業にもなる」と水素の経済的可能性を指摘した。
ただ、化石燃料と違って再生可能エネルギーで作る水素はコストがかかることや、政策の不確実性、インフラ整備などの課題があり、「いくつかのプロジェクトはキャンセルされた」と水素導入のハードルの高さについて言及。しかし、「国際エネルギー機関(IEA)の試算によると、低排出水素の生産は2030年までに4倍に増える。これは15年前の太陽光発電と同様だ」と述べ、「コップは半分満たされている」と水素は発展途上ではあるが価値が高まってきているという考えを示した。
現在、60以上の国が水素戦略を設定、「国際協力がなければ市場が細分化されてしまう。コスト格差を埋めるためために、航空海運などで需要を創出することが大事だ」とし、国際協力がカギになると述べた。そのうえで、「東京都のように、地域レベルのリーダーシップが必要。待つのではなく行動だ。日本はグローバルな指導力を発揮している」と語った。
造る、運ぶ、使うの実践へ
パネルディスカッションでは、小池知事がグリーン水素活用のロードマップを策定した「東京水素ビジョン」を紹介。「造る、運ぶ、使う」の3つのキーワードに、大規模なグリーン水素製造所が稼働、将来的には川崎から都内への供給を念頭にパイプライン構築に向けて動いていることなどを説明した。全国初の取り組みとして、2030年までに燃料タクシーを600台導入するという。

また、オーストラリアのニューサウスウェールズ州はビデオで、同州が国内で唯一、水素目標を法制化し、30億オーストラリアドル規模の優遇措置がとられ、投資環境が整備されていることなどが示された。米国・ロサンゼルス市は岩塩の洞窟にエンパイアステートビル規模の2つのグリーン水素貯蔵施設の開発を進めており、カーボンフリーな電力網を構築する目標を紹介した。
エジプト・スエズ運河経済特区のワリード・ガマルエルディン長官は、スエズ運河の海運の脱炭素化のためのインセンティブを設けて進め、船舶の燃料やバンカリングの脱炭素化を進める重要性を紹介した。
日本の民間セクターからは、旭化成と川崎重工業が参加。旭化成の竹中克・上席執行役員グリーンソリューションプロジェクト長が、10メガワットの世界最大規模の福島県の水電解システム事業について言及。「官民一体で水素サプライチェーン構築に寄与したい」と語った。

川崎重工業の金花芳則・取締役会長は、「すいそふろんてぃあ」という液化水素運搬船を造り、液化水素をオーストラリアと日本間で輸送・荷役できることを実証したことを説明。次の段階として、商業規模にするために液化水素を2500トン運ぶ船や東京近郊の川崎で、液化水素5万m3を蓄えるタンクを建設していることを紹介した。
持続可能な社会の実現へ
最後に、参加者らは「エネルギー移行の最前線に立つ者として、今後も官民の連携による水素プロジェクトを着実に進め、グリーン水素の社会実装化を強固なものとすることで、持続可能な社会の実現に向けた国際社会の取組をリードしていくことを確認した」という共同声明で締めくくった。
筆者:杉浦美香(Japan 2 Earth編集長)
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